「『Jリーグジャッジリプレイ』を届けられたことは有意義」。原博実がJリーグの副理事長として挙げた成果は?

2021年12月13日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

シーズン移行は現実的ではない。

現場で聞いたサポーターの声を役員会で伝える。原副理事長が“スポークスマン”として果たした役割は大きい。写真:Jリーグ

 21年3月をもって現職の任期が満了する原氏。16年3月に就任したJリーグの副理事長として、今日までにどんな成果を挙げ、その仕事ぶりをどう自己評価しているのか。また、さらなる発展を遂げるために、ここからJリーグが進むべき道は──。サッカーというスポーツを心から愛する同氏の言葉に耳を傾けてほしい。

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 Jリーグの副理事長として最初に携わった大きな仕事が、チャンピオンシップの廃止でした。チャンピオンシップ自体は盛り上がるし、注目度も高くてTVも含めたくさんの方に観てもらえます。ただ、それでいいのかと。いくらJリーグ全体の収益増加が見込まれるとはいえ、選手、監督、ファン・サポーターはこの順位決定システムに納得しているのかという面を踏まえて村井さんたちと協議した結果、「ここは一旦止めるべき」との結論に至りました。

 フットボール目線で捉えれば1シーズン制に戻した決断は正しかったと思いますよ、リーグ戦の本来の価値を考えても。一つひとつの積み重ねが順位に反映されるわけで、それこそがリーグ戦の醍醐味でしょう。

 他には、日本サッカー協会とシーズン移行(秋春制へ)について協議しました。いわゆるカレンダー問題は本当に難しいです。正直、正解はありませんからね。私見を述べさせてもらうなら、Jリーグだけシーズン移行するのは反対です。実践するなら社会人やアカデミーの試合もひっくるめてですが、現実的ではないと考えています。その根拠は、真冬の期間。豪雪地域での試合開催や練習場の確保は簡単ではないし、天候によっては飛行機の運行状況も気になりますよね。さらに言えば、寒いと外出が億劫になり、集客にも問題が出てきます。

 結局のところ答は出ていませんが、他の議題も含めて日本サッカー協会やクラブとオープンに話し合えたことは個人的に財産だと感じています。経営面は(チェアマンの)村井さん、現場関連は自分といったように線引きされていたおかげで、比較的自由にやらせてもらいました。選手、フロント、監督の経験があったからこそ、村井さんは私に「好きなスタンスでやってください」と言ってくれたと思います。
 

 自己評価に目を向ければ、『Jリーグジャッジリプレイ』(『Jリーグ公式YouTubeチャンネル』と『DAZN』で配信中)をサッカーファンの皆さんに届けられたことは有意義なことだったと思います。一見すると審判批判と捉えられがちな番組ですが、そうではなくてサッカーの造詣を深めるためにはむしろ必要です。実際、「DOGSO(決定的な得点の機会の阻止)」という言い方も、複雑だったハンドの解釈も浸透してきていますしね。

 審判のジャッジについて改めて議論する、こういう番組こそサッカー文化の原点だと考えています。ある判定をクローズアップすれば、ルールを正しく理解し、試合を観る目も養える。サッカーというスポーツをあらゆる意味で広めるためには、重要な番組ではないでしょうか。

 『JリーグTV』(原氏が届けるJリーグをもっと好きになる情報番組。Jリーグ公式YouTubeチャンネルで配信中)も、やってよかったです。現場で聞いた選手やファン・サポーターの声を番組で伝えたり、理事会で決まった事項をすぐさまお知らせしたり、タイムリーな情報を皆さんに届けられたという自負がありますから。

 『JリーグTV』では、実行委員会や理事会で議論された内容を言える範囲で話しました。昨年にJリーグを4か月中断すると決まった時、すぐに『JリーグTV』を通してその経緯を説明したのは強く記憶に残っています。包み隠さず、というわけにはいきませんが、即座に伝えられる情報は伝える。そうすることで、ファン・サポーターも理事会などでどんな話し合いがされているのかを把握できますし、なにより噂が独り歩きするのを防げたのが良かったです。"伝える"という点で、私も少しは貢献できたのかなと感じています。
 

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