【松本<新戦力チェック>】痛恨の6連敗のなか、小さな“光”を輝かせることを予感させた戦いぶり

2015年07月12日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

決して簡単ではない役回りも「別に難しいことではない」(安藤)。

3バックの左で先発した安藤。2失点を許し、悔しさを滲ませたが、連動したディフェンスを機能させるなど高い適応力を示した。写真:徳原隆元

 すでに周知のとおり、第2ステージを迎えるにあたり、松本は3人の新戦力を補強した。
 
 C大阪から安藤淳、広島から工藤浩平、そして新たな助っ人として、ルーマニアのパンドゥリ・タルグ・ジウからブラジル人のエリックをそれぞれ完全移籍で獲得した。
 
 そのうちのふたり、安藤と工藤がさっそく、第2ステージ初戦の浦和戦でスタメンに名を連ねた。ともに30歳で、J1での実績も豊富なニューカマーは、残留のために巻き返しを図る松本でどんな"デビュー"を飾ったのか――。

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 背番号36の安藤は3バックの左で先発。「今日はちょっと、特殊な守り方だった」と本人が語るように、この日の松本は浦和対策として、前半は徹底したマンマーク戦術を用いていた。
 
 相手のCF+2シャドーに対し、浦和のCF興梠慎三は飯田真輝、2シャドーの一角である武藤雄樹は酒井隆介が密着マーク。となれば、もうひとりのシャドー梅崎司には安藤が付くかと思われたが、梅崎にはアンカーの岩間雄大が監視した。
 
 この他、両サイドでは田中隼磨が宇賀神友弥を、飯尾竜太朗が関根貴大を担当したが、そうした役割分担のなかで、安藤は特定のマークを持たず、主に裏のスペースを取られないように集中したディフェンスを見せていた。
 
 ロングボールを蹴り込まれれば、素早く反応してかき出す。また、興梠や武藤がタイトなマークを振り切ろうと前を向いて仕掛けてくれば、すかさず味方をフォローする形で2対1の状況を作り、ピンチを未然に防ぐ。
 
「練習からできていた」と振り返る安藤は、決して簡単ではない役回りを、「頭を回していれば、別に難しいことではない」と事もなげに言う。そして「先に失点して、プランが崩れた部分はあるけど、うちのやりたいような組織的な守備は我慢強くできていたと思う」とたしかな手応えも掴んだようだ。
 
 移籍後初のゲームにして、連動したディフェンスの一端を担ってみせる。高い適応力を披露した男は、「みんな上手くマークに付いて、しんどい働きをしていた。裏に対しては信頼してもらって、みんながボールに行けるようにできればいいかなと思っていた」と、早くも周囲との信頼関係を築きつつあるようだ。
 
 もっとも、試合は1-2の敗戦。デビュー戦を勝利で飾れず、「負けてしまったので、悔しい」と肩を落とす。それでも「次にはつながるゲーム」と前を向く。
 
 第1ステージを5連敗で終えたチームは悪い流れを断ち切れなかった。ただ、安藤にとっては、少なくとも新天地での挑戦に可能性を感じているのは間違いない。
 
「押し込める時間帯もあった。そこは自信を持っていいし、負けて強がりは言えないけど、チーム全体で戦えた。内容もそんなに悪くなかった」
 
 相変わらず失点が減らないチーム事情については、2失点した浦和戦で自らのミスを認めつつ、改善点について次のように述べる。
 
「難しいところはあるけど、やっぱり、自分たちがボールを持つ時間をもう少し増やす必要はあると思う。このチームはそれができるはずだし、今日も何度かそういうシーンはあった」
 
 ポゼッションの向上――その意味で、もうひとりの新戦力、工藤の存在は無視できないと言えよう。

次ページ時間を作るだけでなく「流れのなかで点も取りたい」(工藤)。

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