【私が見た阿部勇樹】口数は多くないが周囲を魅了する人柄。今でも千葉を気にかけ

2021年11月26日 加茂郁実

まさに“魅惑の人”だった

オシム監督の下でキャプテンにも就任。周囲をまとめる力を備えていた。(C)SOCCER DIGEST

 2021年シーズン限りでの現役引退を発表した阿部勇樹。千葉のアカデミーで育ち、浦和や日本代表でも活躍した輝かしいキャリアを様々な記者に振り返ってもらう。ここでは千葉時代のエピソードを紹介してもらおう。

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 阿部のプレーのすごさは千言万語を費やしても表現し得ないが、万人の知るところでもある。なので、ここではプレー面に関しては割愛させていただき、その人間性に焦点を当てたい。

 決して口数が多くはないが、その一言に注目が集まる。最初の頃は人見知りで、一言、二言しか話さないような感じだったが、千葉のジュニアユースでもキャプテンを務めていたように、元来、人をまとめる力を持っているし、伝える力も十分にある。そして、その芯は実にしっかりとしている。曲がったことが大嫌いで、話したくないことはどんなにこちらが引き出そうと頑張っても口にしない。実は、何回か困ったこともあった。とはいえ、阿部には阿部の理由がきちんとあった。そして、練習後や、試合後には必ずといって、阿部の周囲には記者で人だかりができた。勝っても、負けても、どんな時もみんなが阿部に話を聞きたがった。それは、中心選手だけではない、彼には惹きつける"何か"があったのは間違いない。
 
 個別インタビューする機会にも何度も恵まれたが、今日はどれだけ喋ってくれるかなと、いつも緊張したものだった。喋ってくれなかったらどうしよう。とはいえ、それはいつも杞憂に終わり、話をはじめると、一つひとつ丁寧に説明してくれて、「なるほど!!」と、思うことも多く、こちらの勉強にもなった。

 そして、元千葉のあるJリーガーは、阿部とは実際に一緒にプレーしたことはないのだが、今年に入って、「試合で対戦した時に、『以前は千葉でプレーしていたよね。知っているよ。最近はどう?』等、声をかけてくれました」と、嬉しそうに話し、こう続けた。「次、対戦した時には、ユニホーム交換したいな」と。残念ながら実現はしなかったのだが、阿部が今でも千葉を気にかけている様子を知ることができる一幕であり、阿部が人を魅了した瞬間でもあった。

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