“やっと脚光を浴びた”三笘薫の存在が物語る代表活動のスピード感欠如。重要な切り札になるのは明らかだった

2021年11月17日 加部 究

三笘と中山のセットが後半開始から流れを変えた

三笘は投入直後から得意のドリブル突破で存在感を発揮。伊東の決勝ゴールもアシストし、勝利の立役者となった。(C)Getty Images

[カタール・ワールドカップ・アジア最終予選]日本 1-0 オマーン/11月16日/スルタン・カブース・スポーツ・コンプレックス

 ベトナムへの移動で起きた遅延トラブルなど、想定外の出来事が重なるなかで迎えたオマーン戦だったので、日本陣営にとっては見事に想定がはまった試合だったのかもしれない。

 前半はサイドへの揺さぶりを重視。右は伊東純也に幅を取らせ、厳しくマークされた伊東が中へ入ってくると柴崎岳が開いた。一方左サイドは、長友佑都が大外で高い位置を取り、1度最終ラインまで下りた田中碧がサポートしていく。

 ボールはゆっくりと外周を往来するばかりだったが、オマーンのMFはその都度スライド対応を迫られ、ジャブのように効いていく。これがシナリオに即した伏線だったことは、比類なく実直な指揮官自身が「前半からボールの動かし方は悪くなかった」と明かしたことでも分かる。

 こうしてオマーンのスタミナを削ると、珍しく慎重居士が後半開始から動いた。三笘薫が重要な切り札になるのは、ベトナム戦で起用しなかったことで明らかだった。また、フル代表デビューを迎えた三笘自身も、隠し玉であることを意識し、「流れを持ってくるには最初のプレーが大事」と仕掛けに出て、投入直後にさっそく深い位置でFKを獲得している。
 
 森保一監督は、左サイドの南野拓実と長友、そして三笘と中山雄太はセットとして考えているようで、三笘を追いかけるように中山もピッチに送り出し、南野も古橋享梧にスイッチした。前半はトップ下近くまで中に入ってくる南野と、ワイドでオーバーラップを仕掛けていく長友の組み合わせだったが、ウイングとして縦と内両方に突破を図れる三笘が入ったため、後方支援と組み立てに特長を持つ中山を送り込んだ。

 三笘と中山が決めにいくセットだとすれば、南野と長友は常時掲げている表看板だった。

 後半は、配置も特性も組み合わせも変化したため、オマーン陣営は面食らい、余計に自陣にこもる傾向が強まる。裏返せば日本側の距離感が縮まり、相手陣内でボールを奪取し、2次攻撃を仕掛ける頻度が高まった。

 例えば中山は、東京五輪での反省を意識してオマーン戦のピッチに立っていたという。

「五輪では前に縦に速い選手がいると"行ってこい"になることが多かった。でも仕掛ければ奪われる可能性もある。それを想定して失った直後に2次攻撃に繋げられるように(近い位置でのサポートを)意識した」
 

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