【現地発・オマーン決戦の舞台裏】記者が声を掛けると森保監督は意味深な言葉を口にした「人生は全て生きるか死ぬか」

2021年11月17日 元川悦子

スルタン・カブースのジンクスは生きていた。W杯予選の敵地オマーン戦で4連勝

日本代表を率いる森保監督。オマーン戦に勝利し、3連勝でグループBの2位に浮上した。(C) Getty Images

 引き分け以下なら、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)出場権獲得は遠のき、森保一監督解任の流れも加速すると言われた16日の敵地・オマーン戦(マスカット)。ご存じの通り、日本は苦しみながらも伊東純也(ヘンク)の2試合連続ゴールで勝利。9月の大阪・吹田での初戦黒星のリベンジを果たしたうえ、グループ2位に浮上。ようやく上昇気流に乗ったと言えるだろう。

 大一番の地、スルタン・カブース・スタジアムは日本にとってゲンのいい場所だった。というのも、97年3月の98年フランスW杯1次予選、2004年10月の2006年ドイツW杯1次予選、そして2012年11月の2014年ブラジルW杯最終予選と過去3度、ここでオマーンを撃破しているからだ。全て1点差勝負ではあったが、ギリギリのところで日本は追いすがる相手を突き放してきた。今回も伊東が大仕事をやってのけ、日本と指揮官を救ったのである。
 
 オマーン入りしてからの森保監督は特別な緊張感を漂わせることもなく、普段通りの様子でチームをマネージメントしていた。が、キックオフ前のスタンドの盛り上がりには多少なりとも戦々恐々としたはずだ。

 今回は50%の収容制限下の試合で、観客数は1万5000人に満たなかったものの、バックスタンド側に陣取った熱狂的サポーターは鳴り物と歌でこれでもかというくらいオマーン代表を鼓舞し続けた。日本代表がアップを始めると容赦ないブーイングを浴びせる。彼らにしてみれば「9月に勝ったのだから、今回も勝てる。カタールW杯に行けるかもしれない」という期待感の表われだったに違いない。気温23.5度、湿度53%という気象条件やピッチ環境以上に、この雰囲気が手ごわかった。

 前半の日本はボール支配率こそ63%と大きく上回ったが、決定機を作れず、オマーンの戦術にハマった印象も強かった。森保監督はテクニカルエリアの一番前に陣取り、じっと戦況を見てはメモを取り続けていたが、スタジアムの空気感は感じていたはず。だからこそ、前半が終了して引き上げてくるキャプテン・吉田麻也(サンプドリア)を待ち構えたように議論を始めたのだろう。

「ハーフタイムに変えたじゃないですか。そのプランはもともとあった。相手の状況を見ながら2パターン用意していたので」と吉田も語ったが、この首脳会談を経て、日本は4-2-3-1に布陣変更し、A代表デビューの三笘薫(サン=ジロワーズ)が得意の"ヌルヌルドリブル"で敵を凌駕。決勝点につながるアシストもしてみせた。
 

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