貫かれたコンセプト。複数ある選択肢の最適なマッチングを武器に、ジュビロはJ1昇格を掴み取った

2021年11月15日 河治良幸

イメージが3-4-2-1をメインに共有されている

39節・水戸戦の勝利でJ1昇格が決定。J2優勝も目指しているだけに、残り3試合の戦いにも注目だ。写真:徳原隆元

 シーズン3試合を残して、ジュビロ磐田がJ1昇格を決めた。11月13日に行なわれたJ2リーグ第39節で、3位のV・ファーレン長崎が勝利したため、翌日の水戸ホーリーホックとのアウェーゲームでは勝利が必要となっていた。

 もっとも、病気のために検査入院していた鈴木政一監督に代わり、第36節の大宮アルディージャ戦から監督代行を担う服部年宏コーチは「自分たちで決めるつもりで準備しよう」と他会場の結果を気にせず、水戸に勝つことに集中させたことが、3-1で勝利したゲームの集中力につながったと考えられる。

 非常に攻守の強度が高い水戸に対して、磐田はクレバーに立ち回りながら、セットプレーから大井健太郎が先制点を決めて、山田大記を起点に流れるような右サイドの攻撃から、追い越した小川大貴のマイナスパスに大森晃太郎が合わせる形で追加点。後半の立ち上がりにはカウンターからエースのルキアンが山田のパスに反応して、ファーストタッチでディフェンスをかわしながら今シーズン22得点目となるゴールを決めた。

 その後、オウンゴールで1点を返されたものの、磐田の強さを物語る勝利でJ1昇格を決めると、試合に出ていない選手やスタッフも集まって、記念撮影が行なわれた。J2優勝を果たしてJ1に戻るという目標を掲げる磐田にとっては残り3試合も大事になるが、振り返るといくつかの明確な勝因が浮かび上がってくる。

 昨シーズンの途中から就任した鈴木政一監督は、言わずと知れたジュビロ黄金期の監督だ。フェルナンド・フベロ前監督のようにピッチを図面化したポジションの配置は取らせず、ボールと人の距離感を大事にしながら、流れや局面に応じた選択肢を複数持つことで相手のディフェンスに的を絞らせないようにするスタイルを提示した。

 パターンというものはあまり固めないが、ボールホルダーに対して周囲のどの選手が近くでサポートして、どの選手が飛び出して縦パスの受け手になるのか。その動きに誰が連動するのかといったイメージが3-4-2-1をメインに共有されているのだ。
 
 ただ、シーズンの初期はイメージが合わなかったり、守備のバランスが崩れることで、攻撃にリズムが取れなくなったりしていた。

 それでも鈴木監督は結果が出たり、出なかったりするなかでコンセプトを変えず、良い判断が増えていくことを繰り返し求めることで、プレーの引き出しは構築されていった。後ろからボールを動かして前に運んで行くのは基本だが、ボールを保持することにこだわらない。例えばボールを奪ったところからのファーストパスにFWのルキアンが飛び出して仕留めるのが理想的な形ではある。しかし、そればかり狙っていたら単調になってしまう。

 縦を狙う選択肢、横に動かす選択肢、サイドに大きく振って、そこから素早い連動で崩す選択肢などを同時に持ちながら、ボールホルダー、受け手、周りの選手、距離の遠い選手がどういうポジショニングで、どういう動き出しをしていくかを判断していく。それが鈴木監督の求めるジュビロのベースとなっている。
 

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