横浜戦の0‐8さえエンターテインメントに。FC東京が新たに提供する“娯楽空間”とは?

2021年11月10日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「サンキュー、坂田」の秘話も披露

「FC東京をお店で応援しよう!」キャンペーンのイベントに登場した徳永氏(左)と坂田氏(右)。

「ここでなら苦しみを分け合える」

 2021年11月6日、FC東京が横浜F・マリノスに0-8と歴史的大敗を喫した時、クラブOBの徳永悠平は渋谷の英国風パブ『HUB』でそんな感想を口にした。

 この日、徳永は同じくクラブOBの坂田大輔とともに、クラブのスポンサーであるミクシィが運営するサービス『Fansta』主催の『「FC東京をお店で応援しよう!」キャンペーン』にトークゲストとして参加。冒頭のセリフは、試合中、FC東京が横浜に大量リードされている場面で、ライブビューイングのイベント会場に集まった定員44名のファン・サポーターに向けて発せられたものだった。

 FC東京が失点を重ねていくと、徳永が「もうこうなったら乾杯するしかないでしょ」と静まりかけた会場を盛り上げれば、坂田も02年アジアユース決勝で大熊清監督が発した「サンキュー、坂田」について「今日来てくれた方だけに教えます」という秘話を披露(話の中身はあえて省略)。ゲストふたりの気の利いた振る舞いのおかげで、0‐8という試合展開を忘れさせてくれた。

 スタジアムでの生観戦もいいが、こういうイベントもまた違った意味で試合を楽しめる場であることを改めて認識させてくれた。ひとりでのTV観戦なら0-4となった時点でおそらく止めていただろう横浜戦も、こうしたイベントなら最後まで楽しめる。「苦しみを分け合える」という徳永の言葉は、ひとつの空間をクラブOB、ファン・サポーターで共有しているからこそ出てきたものだろう。
 

 もっとも、ライブビューイングそのものには目新しさはない。今回のイベント会場となった『HUB』もだいぶ前からスポーツ観戦の場は提供している。

「さかのぼれば02年の日韓ワールドカップでパブが一躍名を知られた面があって、今でも(『HUB』に)海外サッカーの試合を観に来るお客様は多いです。パブでは当然のようにライブビューイングをやっていて、そういう文化が徐々に日本に根付いてきた印象はあります。ただ、今回のように『Fansta』(スポーツ観戦に特化した飲食店検索サービス)経由でライブビューイングをおおやけに事前告知してもらえるようになると、従来のヘビーユーザーに加えて、ライト層にも足を運んでもらえるようになるのではないかという期待があります」

 そう話してくれたのは『HUB』の経営企画部の河野将大だ。ライト層を取り込むうえで切り札となり得るのが、たとえば『Fansta』の掲載店舗である「FC東京応援店」(都内7店舗)での事前告知だ。以前は興行主催者および放送事業者との兼ね合いで「試合放送予定の宣伝・告知」は原則不可だったが、『ミクシィ』と『DAZN』との業務提携によりJリーグのみならず、日本代表戦の告知も可能になった。

「『DAZN』さんが日本代表W杯アジア最終予選のライセンスを取られまして、『日本代表』の試合の放送予定を告知できるようになったのは大きいです。『Fansta』さんを通してWeb上でしっかりと告知できれば、今まで以上のお客さんに有益な情報を提供できると考えています」(河野)

 河野は続けていう。

「今までのクラブとタイアップした企画では限定的な集客になっていて、それがひとつの課題でした。そこで『ミクシィ』さんが提供する『Fansta』なら、『ミクシィ』さんのノウハウを通じて若いユーザーにも届くのではないかと、そういう考えに至りました」
 

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