【女子W杯】意表を突くセットプレーに象徴された“追われる立場”の難しさ

2015年07月06日 西森彰

セットプレー時、ロイドのポジションの異変に気付いた佐々木監督だったが…。

日本は立ち上がり、セットプレーからロイドに2点を許してしまった。佐々木監督は相手のポジショニングに異変を感じていたというが……。(C) Getty Images

 前回のドイツ女子ワールドカップ、ロンドン五輪に続き、世界大会3回連続での顔合わせとなったなでしこジャパンとアメリカの決勝戦は、2-5と思わぬ大差がついた。
 
 日本、アメリカともに、4-4-2でセミファイナルまでと同じ布陣。ただし、日本は自分たちにとってベストの組み合わせで臨んだが、対してアメリカは日本対策とも取れる布陣。スピードのあるアレックス・モーガンとロドリゲスのコンビが予想されたが、実際にはドイツ戦に続きモーガンとロイドのコンビで臨んでいる。
 
 これまでの日本戦ではボランチでのプレーが多かったロイドをFW起用したということは、アメリカが劣勢を想定した中盤での戦いを放棄したと取れる。その代わりに今大会、日本の武器のひとつとなっていた日本の両CBからのビルドアップを楽にさせないという狙いがあった。
 
 対戦成績では圧倒的優勢。BCプレイス・スタジアムに足を運んだサポーターの数でも多数派のアメリカが、世界ランキング1位のドイツ戦と同様に守備を考えて試合に入らざるを得ないほど、なでしこジャパンの力は評価されていた。
 
 イングランド戦の余韻が残っていたのか、様子を窺いながら試合に入った日本に対して、アメリカは試合開始から、チェイシングのアクセルを吹かしてきた。ロイド、モーガンのふたりが日本のDF陣にプレッシャーをかけ、ボール奪取とともにサイドに振って突破口を見出す。
 
 そして3分。アメリカが奪った右サイドからのCK。ハイボールを予期して備えていた日本に対して、ラピノーは速いグラウンダーのボールを入れてきた。日本のDFは、それぞれ相手を掴んでいたが、ペナルティエリアの外から猛禽類のような素早さで走り込んできたロイドが蹴り込んだ。
 
「あそこにロイドがいるのは変だ」と佐々木則夫監督も思ったそうだが、このトリックプレーをいきなり繰り出してきたアメリカが一枚上手だった。試合の流れに乗り切れていない開始直後の時間帯に奪われたこの失点は、今大会初めての先制点献上であり、ドイツ大会から13試合目にして初めてのセットプレーからの失点。なでしこジャパンは1点のビハインドを背負ったというだけでなく、メンタル面でも深手を負わされた。
 
 2分後にも同じように左サイドからのFKを献上し、同じようにグラウンダーのボールを入れられ、再びロイドに決められる。
「どちらもセットプレー。最初に失点すると厳しい戦いになることは分かっていましたが、それを確実に決めてくるのがアメリカ」(鮫島彩)

次ページ大儀見の追撃ゴールを勝負どころに、攻撃的な選手を投入。

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