「日本の宝」超高校級CBチェイス・アンリが監督へ恩返し弾! 尚志を2年ぶりの選手権へ導く「全国制覇したい」

2021年11月07日 安藤隆人

福島予選決勝はあまりにも劇的な幕切れに

尚志がチェイス・アンリの劇的な決勝ゴールで学法石川を下し、2年ぶりとなる選手権本大会への切符を手にした。写真:安藤隆人

 高校サッカー選手権福島県予選決勝・尚志vs学法石川の一戦は、あまりにも劇的な幕切れだった。
 
 高校ナンバーワンCBの呼び声が高いチェイス・アンリを擁する尚志は、前半28分に右サイドを突破したMF佐藤利明のクロスに、中央でFW小池悠斗がドンピシャヘッドで合わせて、先制に成功をした。その後も松尾春希と新谷一真のダブルボランチと、チェイス・アンリのロングフィードを軸に尚志がゲームを優位に進めるが、後半に入ると状況は一変する。
 
 学法石川は、高田颯太と円道竣太郎のCBコンビが強固な守備を見せながらも、機を見たロングフィードと縦パスを駆使して攻撃を組み立てると、トップ下の平田愛斗と後半から投入されたFW佐藤武流が起点となって攻め手を強めた。
 
「尚志相手に引いて守るより、リスクを負っても前からのプレスと積極的な攻める姿勢を選手たちが持ち続けてくれた」と稲田正信監督が語ったように、1点ビハインドを背負った学法石川は相手に飲まれることなく、縦に速い攻撃を繰り出し続けた。
 
 さらに、屈強なフィジカルを持つ右サイドバック、原田雄斗のロングスローも織り交ぜて、徐々に尚志の守備ラインを下げさせていった。
 
 後半29分、右サイドを突破した途中出場のMF谷唯煌のクロスを、中央で受けた佐藤が狙う。これはチェイス・アンリのブロックに阻まれたが、徐々に得点の予感を漂わせると、同33分に原田の左からのロングスローに最後は円道が押し込んで、学法石川がついに同点に追いついた。
 
 これで勢いに乗った学法石川は、さらに尚志を追い詰める。後半38分には、円道のロングフィードから佐藤が完全に抜け出してGKと1対1を迎える。この試合最大のチャンスを掴むが、佐藤が放ったシュートはわずかに枠の外へと外れた。

 その1分後にも、ふたたび佐藤がゴールのわずか左にそれるシュートを放つなど、得点の機運がさらに高まっていたが、この空気を一変させ、主役の座を一気に持っていったのが尚志のチェイス・アンリだった。

 後半アディショナルタイム2分。延長戦がちらつくなか、学法石川は守りに入ることなく相手ゴールに圧力をかけると、耐え忍んだ尚志のカウンターを受けた。

 自陣からのロングキックが右サイドを抜け出していた途中出場のMF草野太貴のもとに届く。草野は鮮やかなワンタッチで中に仕掛けると、そのまま相手DF3人を引き付けて右のインサイドスペースを突破。そして、ファーサイドにできたスペースにボールを送り込むと、そこに走り込んでいたのは、つい先ほどまで尚志のゴール前にいたチェイス・アンリだった。

「身体が勝手に動いていた」という約80メートルのスプリントから、「相手が慌てて飛び込んでくるのが見えた」と草野からのパスを冷静に右足でトラップをすると、シュートブロックにきたCB円道の股の間を通すシュートを放った。ボールはガラ空きだった右隅に吸い込まれ、喜びを爆発させるチェイス・アンリを中心に歓喜の輪ができた。

 このゴールが決勝弾となり、尚志が苦しみ抜いた末に2-1で学法石川を振り切って、2年ぶりの選手権出場を決めた。

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