「なでしこ vs アメリカ」激闘の記憶【2011年ワールドカップ決勝】初優勝の歓喜をプレーバック!

2015年07月05日 早草紀子

アメリカの一瞬の隙を突き、宮間が執念の同点弾。

この日の日本は粘り強かった。0-1で迎えた81分、アメリカの一瞬の隙を突き、宮間が同点ゴールを決める。 (C) Getty Images

 7月17日、決勝の舞台に立った日本はアメリカに二度リードを許した。しかし、追い込まれては這い上がり、ついにPK戦へと突入する。そして、日本は過去一度も勝ったことがなかった強大な相手を打ち破り、世界の頂点へと駆け上がったのだった――。

【PHOTOアーカイブ】「なでしこvsアメリカ」激闘の記憶
 
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 日本が世界4位となったのは、3年前の北京五輪だった。あの時から、なでしこジャパンの新たな目標――世界大会でのメダル獲得への挑戦が始まった。
 
 迎えた今回のドイツ・ワールドカップで、日本はさらなる進化を見せると、メダルへの挑戦権どころか、「世界一」への挑戦権を手にしたのだ。
 
 ファイナルの相手は、世界ランキング1位のアメリカ。ワールドカップでは1991年の中国大会、自国で開催した99年大会と過去2回優勝。2008年の北京五輪でも金メダルを手にしている。
 
 これまで日本は何度もアメリカに挑戦しては、その壁に跳ね返されてきた。今年5月にはアメリカに遠征して2試合の強化試合を戦い、いずれも0-2で敗れた。その強さは熟知している。
 
 これ以上ない難敵に立ち向かう。そんなチャレンジャー精神をもって、晴れの舞台になでしこは立ったのである。
 
 しかし立ち上がりから、アメリカに力の差を見せつけられる。
 
 そのスピードとパワーに圧倒され、前半だけで12本のシュートを浴びた。ゴールゲッターのワンバックをケアしても、司令塔ロイドのパスワークを抑えても、アメリカの猛攻は止まらない。スピーディーな突破で両サイドをえぐられる。
 
 それでも日本は、まさにギリギリのところで持ちこたえ、どうにか前半を0-0で折り返した。
 
「こういう展開は予想できた」と宮間あやが語ったように、日本が耐える時間は後半も続き、69分、ついにカウンターから先制点を奪われてしまう。
 
 チーム最年少モーガンのゴールでリードを奪ったアメリカは、さらにプレッシングを強めてくる。日本は宮間のスルーパスなどでなんとか活路を見出そうとするが、なかなか実を結ばない。
 
 時間は刻一刻と過ぎ、1点が重くのしかかる――。日本の選手たちに焦りの色が見えはじめる。それでも粘り強く戦いながら、アメリカの隙をうかがう。
 
 81分だった。
 
 右サイドを突破した永里優季のクロスに丸山桂里奈が飛び込む。これはシュートには至らなかったが、DFがこぼれ球の処理にもたつく隙を突いた宮間が、相手より一瞬早くその左足を伸ばしてネットを揺らす!
 
 執念の同点弾で日本は試合を振り出しに戻したのだ。

次ページアドリブで決めた作戦が再度の同点ゴールを生む。

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