「時間をかけてやれ!」4歳上の味方へ的確な指示も…U-22日本、松木玖生が放った先制弾にとどまらない存在感

2021年10月27日 安藤隆人

チームを落ち着かせた立ち上がりのコーチング

先制点を挙げるなど、松木が初戦で躍動。写真:浦 正弘

 来年、ウズベキスタンで開催されるU-23アジアカップの本大会出場を懸けた予選が福島県のJヴィレッジで開催された。カンボジア、香港と同組になったU-22日本代表は26日に初戦のカンボジア戦を迎えたが、ここで抜群の存在感を示したのが青森山田高3年のMF松木玖生だった。
 
 松木はMF櫻井辰徳が負傷によって辞退をしたことで追加招集されていたが、この試合では追加招集とは思えない活力あるプレーでチームを牽引した。開始10分には右CKに対し、ファーサイドに飛び込んで先制弾をヘッドで叩き込んだ。

「カンボジアのセットプレーの守備はファーサイドが空くと監督から言われていたので、そこを狙いました。突っ込んで行ったらボールが来たので決めるだけでした」と、試合後に本人はさらりと答えたが、このゴールは簡単なゴールではなかった。GKのパンチングミスがファーに流れてきたが、松木は身体を折りたたむように軌道が変わったボールに頭を差し出し、しっかりとミートしてゴールに突き刺した。

 冷静に事前のスカウティングを頭に入れ、きちんと遂行する。ここぞという場面でゴールを決める勝負強さをいきなり示す形となった。

 その後はチャンスを作れどなかなか決めきれない展開となったが、松木はボールのないところの動きでもチームの攻撃を活性化した。

 どうしても我が強い選手に見られがちだが、彼の持ち味は高い献身性にある。青森山田では強烈なプレスバックと精力的なカバーリングで、守備面では一切手を抜かないプレーを見せ続けている。この代表ではポジションがボランチではなく、4-3-3のインサイドハーフとなったことで、アンカーの松井蓮之のケアに気を配りながらも、味方がボールを持つと積極的に前線にスプリントをして相手守備陣の歪みを作り出した。

 印象的だったのがプレーだけではなく、声の部分だ。前半、味方のミスからカウンターを受けてピンチとなったが、相手のコントロールミスもあって松井がこぼれを拾ってマイボールにした瞬間、学年では4つ上の松井に対して、「蓮之!時間をかけてやれ!」と的確な声を出した。それに反応した松井はボールをキープし、ポゼッションを選択。この声でチームは落ち着いた。

【動画】松木が日本に勢いをもたらす先制弾!(開始すぐ)

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