【リーグカップ決勝・名勝負3選】成長途上のクラブが強豪を倒す。「下剋上」こそが醍醐味だ!

2021年10月27日 元川悦子

5年計画で強化を進めてきた最初の頂点

PK戦の末、スター軍団の鹿島を下した柏が頂点に立った99年大会。最後のキッカー・萩村が決めた瞬間、国立に大歓声が響き渡った。(C)J.LEAGUE

 今年で29回目を数える伝統のリーグカップ(現ルヴァンカップ、旧ナビスコカップ含む)。10月30日に行なわれる決勝戦では、名古屋グランパスとセレッソ大阪が相まみえる。

 タイトルをかけた激闘必至の一戦で、どんなドラマが生まれるか。過去のファイナルでも、忘れがたい名勝負がある。本企画では、フリーライターの元川悦子氏に、過去28大会から思い出るに残る決勝戦を3つ選んでもらった。

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 1992~94年のヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)の3連覇に始まり、常勝軍団・鹿島アントラーズの6回優勝と、伝統クラブが数多くのタイトルを取った印象の強いJリーグカップ。そんな過去28回の歴史の中には、成長途上のクラブが強豪を撃破した瞬間があった。「下剋上」こそが同大会の醍醐味だと言っていい。

 象徴的なファイナルを3つ挙げると、まずは99年の柏レイソル対鹿島戦だ。当時の鹿島は、98年フランスW杯メンバーの相馬直樹、名良橋晃らに加え、偉大な助っ人ビスマルクや新進気鋭の点取り屋・柳沢敦らを擁するスター軍団。彼らを撃破したのが柏だった。

 名将・西野朗監督に率いられた北嶋秀朗、大野敏隆らを擁する若き集団は、常勝軍団相手に一進一退の攻防を繰り広げ、2-2に追いつき、延長戦に突入。それでも決着がつかずにPK戦までもつれこみ、最後のキッカー・萩村滋則が決めた瞬間、国立競技場は黄色の旗が激しく揺れ、大歓声が響き渡った。

 当時の久米一正GMが「若手を育ててタイトルを取る」と5年計画で強化を進めてきた最初の頂点が、この優勝だった。西野体制の柏は2000年のJ1で年間勝点1位。1シーズン制だったら優勝していた。その布石を打つ大一番だった。
 
 2つ目は04年のFC東京対浦和レッズ戦。2000年にJ1初参入した当時のFC東京は「部活サッカー」と言われるような泥臭いチーム。日本代表の加地亮やアテネ五輪代表の石川直宏、今野泰幸、茂庭照幸らが加わり、強豪への階段を駆け上がっていた時期だ。

 一方の浦和は田中マルクス闘莉王、長谷部誠、鈴木啓太らのちの日本代表主力に加え、エメルソンのようなケタ外れの外国人FWもいて、黄金期を築きつつあった。

 シュート数8対27という数字に象徴される通り、浦和優位の展開が続くなか、原博実監督率いるFC東京は持ち前のタフさと粘り強さを前面に押し出した。後半には守備の要・ジャーンが退場し、劣勢を強いられたが、何とか耐え忍んで0-0のまま延長戦、PK戦まで持ち込んだ。

 そしてPK戦では守護神・土肥洋一が山田暢久のシュートをセーブ。最後の加地が決めて勝ち切った。この初タイトルもFC東京がJ1強豪へと飛躍する大きな節目になった。
 

次ページオリジナル10の名門を破った印象深いファイナル

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