クラシコの勝負を分けたポイント――アラバのカウンター弾はなぜ生まれたのか。結果に表われたマドリーの「明確な狙い」

2021年10月25日 河治良幸

バルセロナは一か八かのボールを入れるしか活路なし

鮮やかなカウンターから先制ゴールを挙げたマドリーが試合を優位に進めた。(C)Getty Images

 2021-22シーズンにおけるエル・クラシコの1試合目がカンプ・ノウで行われ、アウェーのレアル・マドリーが2‐1で勝利した。

 システムは同じ4‐3‐3ながら、中盤からショートパスをつないで崩しにかかるバルセロナと、シンプルな展開から3トップに縦パスを通して、そこから厚みのある速攻を繰り出すマドリーという構図は、近年のエル・クラシコと同じだった。

 ただ、前半からレアル・マドリーの3トップが高い位置で前を向いてボールを持つシーンが多く、バルセロナが自陣に下がりながらの守備を強いられた。一方で、バルセロナがボールを持ってもマドリーの堅固な守備に対して有効なスペースを見出せず、ブロックの外側から一か八かのボールを入れるしか活路がなかった。

 そうした流れの中で、ヴィニシウス・ジュニオールがドリブルからPKを誘発しかけたり、オフサイドになったとはいえ、カリム・ベンゼマがギリギリで裏のスペースを狙うなど、アドバンテージを取り続けたマドリーは、32分に先制ゴールを奪うことに成功した。決めたのはセンターバックのダビド・アラバ。しかもセットプレーからではなく、流れからのゴールだった。
 

 起点となったのはアラバ自らのボール奪取だ。4バックと3バックによる2ラインに加えて、右ウイングのロドリゴが落ちて8人のブロックを作るマドリーに対して、バルセロナはボールホルダーを含めた7人がマドリー陣内で攻撃参加していた。

 アンカーのセルヒオ・ブスケッツがボールを持った時に、マドリーはセンターフォワードのベンゼマがプレスバックで潰そうとする。ブスケッツは横に外して左サイドバックのジョルディ・アルバに展開する。そこから大外で受けたアンス・ファティがジョルディ・アルバと入れ替わるように中へと入り、中央のメンフィス・デパイに横パスを通そうとする。そこに後方から勢いよく進み出たアラバが慌ててターンしたデパイとボールの間に身体を入れて奪い取った。

 すごかったのはここからだ。当然バルセロナは即時奪回を狙って、まずは奪われたデパイが奪い返しにくるが、アラバはうまく背中でブロックしながら左のヴィニシウスにショートパスを通した。そこからヴィニシウスがバルセロナの右サイドバックを担うオスカル・ミンゲサとの1対1を制する間に、アラバは左からベンゼマを追い越した。

 ボールを奪われ、さらに奪い返せなかったデパイも全速力でアラバを追うが、追い付けないままヴィニシウスの縦を切るポジションを取り直した。結局ヴィニシウスはフリーで走るアラバを使わずに、反対サイドでフリーになっていたロドリゴにサイドチェンジのパスを通す。

 その流れに連動するようにベンゼマが右斜めのランニングで最終ラインに残っていたエリク・ガルシアとジェラールのピケのセンターバック2人を引きつけたことで、アラバが左前方で完全なフリーになった。そしてロドリゴから正確なパスを受けると、E・ガルシアが寄せてくる前に左足を振り抜き、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの牙城を破る強いシュートをゴール右に突き刺した。

【動画】後半アディショナルタイムに2ゴール!バルサ対マドリーの激闘

次ページピケとE・ガルシアのどちらかがアラバをチェックできていれば…

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事