U-15の決勝敗退で歴史にピリオド……破産パルマの現状と未来は?

2015年07月01日 片野道郎

残留、移籍…選手はユースからトップまで新たな道を模索中。

U-15のファイナル。クラブへの愛情と誇りを胸に、懸命に最後の試合を戦った選手たちに、人々は惜しみない拍手を送った。クラブの破産は、プロ選手、ファンだけでなく、未来ある若者のキャリアにも大きな影響を与えることとなる。 (C) Getty Images

 6月28日、U-15のユースカテゴリー「ジョヴァニッシミ」の2014-15シーズン決勝ラウンドのファイナルが中部イタリア・トスカーナ州のキアンチャーノ・テルメで行なわれ、インテルが延長戦でパルマを下してスクデットを勝ち取った。
 
 パルマは財政の破綻を理由に今年3月、裁判所から破産宣告を受けており、運営会社(パルマFC株式会社)は破産管財人によって競売にかけられていた。
 
 しかし、6月23日の期限までに買収交渉が成立せず、クラブの消滅と解体が決まっている。そのためこのジョヴァニッシミの決勝は、パルマFCの歴史における最後の試合となった。
 
 スクデットを勝ち取って「有終の美」を飾るために、パルマは全力を尽くし、実力で上回るインテルに2点のリードを許しながらも後半に追いついて延長に持ち込むという健闘を見せた。しかし、最後は立て続けに2点を失い、1点を返したものの試合は3-4で終了。偉業はならなかった。
 
 さて、この試合を最後に「パルマFC株式会社」は消滅したが、都市パルマを代表するサッカーチームが消えるわけではない。
 
 破産確定直後から、地元財界では新たな運営会社を設立してクラブの権利(一種の命名権)を継承し、アマチュアのセリエD(4部リーグ)から再スタートを切るためのプロジェクトが始動している。
 
 このプロセスは、かつて00年代にフィオレンティーナやナポリ、最近ではシエナやパドバなどのクラブがたどったのと同じ道だ。
 
 セリエDの登録期限は7月6日だが、すでに新会社「パルマ1913」が地元の実業家9人の共同出資によって設立されており、パルマ市からスタジアムの使用権供与を受けてチームの登録にこぎ着ける見通しだ。
 
 この新クラブの会長には、1990年代前半にカップウィナーズ・カップ(92-93)とUEFAカップ(94-95)を勝ち取った当時の監督ネビオ・スカラが担ぎ出されている。
 
 ただし、この新クラブは旧クラブの資産(施設から選手まで)を継承することがいっさいできないため、文字通り「ゼロからのスタート」を強いられることになる。
 
 これは、プロクラブが破産・消滅した場合には、選手とのプロ契約(トップチーム)も選手登録(下部組織)もすべて無効となり、トップチームから下部組織まで全選手がフリーエージェントとなるというルールがあるためだ。
 
 昨シーズンのメンバーのなかには、キャプテンのアレッサンドロ・ルカレッリ(37歳)をはじめ、新クラブと契約を交わしてパルマでプレーを続けると明言している選手も何人かいるが(多くはベテラン)、ほとんどの選手はフリーエージェントという立場を活かして他のクラブと契約し、プロとしてプレーを続行することになるだろう。
 
 右SBマッティア・カッサーニ(31歳)がサンプドリアと合意しているほか、GKのアントニオ・ミランテ(31歳)も来シーズン、セリエAに復帰するボローニャ入りがほぼ内定。若手のなかでは、18歳でレギュラーに定着して多くのクラブの注目を集めたMFジョゼ・マウリのミラン入りが濃厚となっている。
 
 他の多くの選手にも様々なオファーが舞い込んでいることから、今後、続々と新シーズンの所属先が決まっていくはずだ。
 
 スクデットを争ったU-15をはじめ下部組織の選手たちも、多くは地元のアマチュアクラブ、そして優秀なタレントたちはレッジャーナ、モデナ、サッスオーロ、カルピ、ピアチェンツァといった近隣都市のプロクラブの下部組織に引き抜かれて、プレーを続けることになるだろう。
 
文:片野道郎
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