【コパ・アメリカ現地レポート】アルゼンチン、ついに爆発! パラグアイを一蹴してチリとの決勝へ

2015年07月01日 熊崎敬

煮え切らなかったアルゼンチンの前線がついに!

6-1でパラグアイを一蹴したアルゼンチン。メッシは得点こそなかったが、2つのゴールを演出した。 (C) Getty Images

【コパ・アメリカ2015】
準決勝
○アルゼンチン 6-1 ●パラグアイ
[得点者]ア=ロホ(15分)、パストーレ(27分)、ディ・マリア(47分、53分)、アグエロ(80分)、イグアイン(83分) パ=バリオス(43分)
 
 アルゼンチンとパラグアイの準決勝が行なわれたこの夜、コンセプシオンのスタジアムはチリ人8、アルゼンチン人2の割合で埋められた。パラグアイ人はほとんど目につかない。
 
 前夜に決勝進出を決めたチリ人は、高みの見物をしようとスタジアムに足を運んだわけではない。彼らの目的はただひとつ、パラグアイの応援だ。
 
 チリの人々はコパに王手をかけている。過去百年、手が届かなかったコパ。あとひとつ勝てば、人々は国家的悲願であるコパ優勝を体験することになる。それは息子や孫に死ぬまで自慢できる、夢のような物語だろう。
 
 死んでもコパを獲りたいチリ人には、世界一のメッシを擁するアルゼンチンを倒して優勝したいという冒険的野心はない。当然だ。アルゼンチンとは過去80回対戦して6勝21分け53敗と、ほとんど勝っていないのだ。そんな天敵に比べれば、25勝7分け26敗と互角のパラグアイの方がよっぽど戦いやすい。
 
 こうしてチリ人は、サポーターのいないパラグアイの応援を率先して買って出ることになった。
 
 試合前からチリ人は元気がよかった。アルゼンチン人が歌い出すたびに、伝統の「チチチ! レレレ!」で敵の歌声をかき消し、自然発生した国歌の大合唱がスタジアムを包む。
 
 だが、チリ人の元気は長続きしなかった。アルゼンチンは自慢の攻撃力で、パラグアイとチリを黙らせたのだ。
 
 15分にFKのこぼれ球をロホが流し込んで先制すると、27分にも中央突破からパストーレが2点目を決める。
 
 ただ、前半終了間際にパラグアイが1点を返すと、チリ人たちはふたたび喜色満面に歌い始めた。
「メッシはスペイン人だ!」と繰り返し、「このコパは絶対に勝たなきゃいけない!」と叫び続けた。
 
 この大会のパラグアイは、とにかくしぶとい。グループリーグではアルゼンチンに0-2から同点に持ち込み、ウルグアイにも先制されて追いついた。ブラジルとの準々決勝でも同点に追いついてPK戦で勝っている。
 
 パラグアイを率いるアルゼンチン人のラモン・ディアス監督は敵のリズムを攪乱しようと後半立ち上がり、前から強烈に圧力をかけた。アルゼンチンのパスワークは途端に窮屈になり、パラグアイの狙いは上手くいくかと思われた。
 
 だがアルゼンチンは瞬く間に、この変化に対処した。47分、敵の圧力を巧みにかいくぐってパスをつなぎ、あれよあれよという間にディ・マリアが3点目を決めてしまう。彼は6分後にもゴールを決め4-1。勝負は完全に決した。
 
 いつしかアルゼンチン人の歌声がスタジアムを包み、チリ人たちは黙り込むか、大人しく席を立ち始める。アルゼンチン人はいままでのお返しとばかり、チリ人を罵倒し始めた。「チチチ! レレレ!」の替え歌まで歌い始めた。
 
 グループリーグで死闘を繰り広げた両国の対戦は6-1と、思わぬ大差がついた。攻撃力は世界一と言われながら、いまひとつ煮え切らなかったアルゼンチンの前線が、準決勝でついに爆発した。メッシは無得点だったが、少し後ろから仲間たちを操り、ふたつのアシストを決めた。
 
 前夜、決勝進出を決めて有頂天になったチリ人に、今度はメッシとアルゼンチンの恐怖が迫る。チリ人たちは至福と不安が交錯する中で、決勝までの3日間を過ごすことになった。
 
現地取材・文:熊崎敬
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