【U-22日本代表】前田直輝――中島翔哉に“嫉妬”していた期待のレフティが、特別なナンバーを背負い、飛躍を誓う

2015年07月01日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

2列目右サイドで先発か。得意のカットインからゴールを狙う。

今季、移籍した松本での活躍が認められて代表入りを果たした前田。ようやく掴んだチャンスをモノにできるか。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 前日練習の終盤には、セットプレーの確認が行なわれていた。前田直輝はビブスなし組に入り、守備時には野津田岳人と並んでストーン役(中でマークに付かずニアサイドを担当)を任された。
 
 その練習を振り返り、前田は「やらかしてしまった」と苦笑する。
 
「ストーンを初めてやったんですけど、空振りました(笑)」
 
 本番では避けたいミスではあるが、攻守において念入りな確認作業がなされていたセットプレーの練習で、ビブスなし組の面子を確認すると、野津田のほか、遠藤航、中島翔哉、岩波拓也、植田直通、浅野拓磨……といったレギュラークラスが顔を揃えていた。
 
 答えは分かっていても、「明日は先発か?」と聞けば、案の定、「まあ、分かんないですけど」と返ってきた。
 
 もちろん、前田本人はピッチに立つ準備ができている。
「スタメンでもベンチスタートでも、チャンスがあれば、自分の良さを出すだけです」
 
 手倉森ジャパンには初招集だが、去年3月の候補合宿には参加している。それ以来の代表での活動となるが、「松本もそうですけど、代表にも上手い選手が揃っているし、楽しいです」と充実しているようだ。
 
「青いユニホームを着るのは本当に初めて。それでピッチに立てば、いろんな感情が出てくると思う。緊張も絶対にあるだろうし。でも、そこを楽しみながら、近くにはずっと一緒にやってきた(東京Vでの)同期がいますし、一緒に手を組んでやれたらと思います」
 
 その同期が中島であり、手倉森ジャパンにとっては不可欠なひとりと言っても過言ではない選手である。
 
 そうした存在は当然、前田にとって刺激になるが、また別の感情もあったようだ。照れたような表情を浮かべながら、正直な気持ちを吐露する。
 
「ぶっちゃけ、嫉妬してあんまり(試合など)見てなかったですけどね(笑)。吉野(恭平)だったり、安在(和樹)だったり、(手倉森ジャパンには)同期が何人もいたので」
 
 東京Vの育成組織でともに育った仲間たちの活躍を、素直に受け入れられなかった時期もあったようだが、ようやく自分も同じステージに辿り着いた。中島については「結果を見ても、誰もがエースとして認める存在だと思う」と言う一方、「自分も負けたくない」とプライドを覗かせる。
 
 起用されるポジションは、2列目の右サイドが濃厚だ。左利きだけに外からのカットインでシュートが狙える。それは得意な得点パターンであり、実際、その形から所属クラブの松本では今季2ゴールを挙げている。
 
 代表の舞台でも、自信のあるゴール前右45度の"前田ゾーン"から鮮やかな一撃を決められるか――。
 
 与えられた背番号は11。東京V時代にも付けていたこともあり、当時は「この番号は日本を背負わなくてはいけない」という強い想い入れもあった番号だ。
 
 前日練習の時点で、まだユニホームは手にしていない。
「(受け取った時には)たぶん、緊張すると思います(笑)」
 
 厳しい戦いが予想される最終予選を半年後に控え、新戦力の台頭も期待している手倉森誠監督の期待に応えたい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
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