オーストラリア戦の救世主は田中碧。よくぞ中盤を立て直した【編集長コラム】

2021年10月12日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

課題ももちろんあったが、それでも「田中碧を救世主」と主張したい

素晴らしい先制点を決めるなど確かな存在感を示した田中。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 屈辱にまみれたサウジ戦からシステムもメンバーも変更して臨んだオーストラリア戦。しかもホームなのだから、これで引き分け以下なら、そもそも監督にも選手にも力がなかったと批判されるゲームだった。窮地に追い込まれた状況下でこそ真価が問われるわけで、今回のオーストラリア戦はいわば"森保ジャパンの集大成"と捉えてもいい試合だったのだ。

 結果、苦しみながらも2-1と勝利。前半に限れば良いゲーム内容で、特に中盤の構成力が素晴らしかった。インサイドハーフの田中と守田、アンカーの遠藤と3人の距離感が絶妙で、そのおかげでショートカウンターをコンスタントに発動、攻められてもコンパクトな守備でボールを奪取できた。両サイドバックがコンスタントに高い位置をとれたのも、中盤の3枚が良い流れでボールの出し入れをして酒井と長友に時間とスペースを与えたからだろう。

 大迫が決定機を外し、41分に大ピンチを迎えたが、前半は明らかに日本ペースだった。立ち上がりからアグレッシブに戦ったからこそセカンドボールも日本のほうに転がってくるし、自分たちの力で流れを引き寄せていた印象だった。

 その前半に比べれば後半はバタつく時間帯があり、一度はフルスティッチに強烈なFKを叩き込まれて1-1に追いつかれてしまう。絶対に勝たないといけないプレッシャーからか、パスミスも目立つなどあまり上手くいかなかった。それでも悪い流れに吞み込まれず、終盤に浅野がボレーシュートで呼び込んだオウンゴールで再びリードして勝点3を手にしたのだから、結果オーライという見方はできる。
 

 もちろん、課題を上げれば複数ある。決定力不足は深刻(さすがに決定機を外しすぎだろう)で、また後半の試合運び──オマーン戦、サウジ戦、オーストラリア戦はいずれも時間が経つにつれて雑になっている点も看過できない。サッカーは90分間を戦うスポーツで、前半だけよければいいというわけではない。

 とはいえ、予選3試合を消化してそこまで良くなかったチームがいきなり完璧なゲームマネジメントをできるわけがないのも事実。その点で、苦しいなか勝点3をよくもぎ取った。ゴールに結びついた浅野のシュートに痺れたし、熱い何かを感じさせてくれた。内容以上に結果が求められるのだから、まずは本大会の出場権を争うオーストラリアに勝ったという事実が重要だろう。

 そんな試合の救世主は浅野ではなく、田中と主張したい。スタメン抜擢に応える形で貴重な先制ゴールを奪い(それもパーフェクトなシュート)、その後も中盤をコントロール。気の利いたポジショニングとサポート、ボールを落ち着かせるタイミング、そのどれもが地味ながらも利いていた。後半こそ支配力を弱めたが、彼には「よくぞ中盤を立て直した」というメッセージをおくりたい。

 冨安のリスクマネジメント、権田のファインセーブ、大迫の38分のキープ、伊東の果敢な仕掛け、遠藤のボール奪取など、それぞれ持ち味を発揮したシーンはあったが、この日は田中をマン・オブ・ザ・マッチに推したい。いくつか危険なボールロストがあったとはいえ、それでも十分すぎる仕事をした。

 振り返れば、前回の最終予選では大迫や原口、久保裕、井手口などが台頭し、悪い流れを振り払い、予選突破に導いた。その再現のような活躍を、田中には期待したい。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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