【女子W杯】飛躍する「黒子レフティ」、宇津木の輝き

2015年06月29日 栗原正夫

岩渕の決勝弾も、こぼれ球にいち早く反応した宇津木が起点に。

2試合続けてボランチでスタメン出場したオーストラリア戦。暑さのなかでも集中力を切らさず、中盤の底で黙々とピンチの芽を摘んだ。 (C)Getty Images

 カナダ女子ワールドカップ準々決勝で、オーストラリア(FIFAランク10位)を1-0と下し、ベスト4進出を決めたなでしこジャパン(同4位)。その試合で、「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」に選ばれたのが、2ボランチの一角としてフル出場した宇津木瑠美である。

【女子W杯PHOTOギャラリー】なでしこジャパン「激闘の軌跡」
 
 気温は約30度、人工芝のピッチには太陽が激しく照りつけ、文字どおり消耗戦の様相を呈した一戦で、宇津木は持ち味であるフィジカルの強さを活かし、中盤で相手の攻撃の芽を摘み取っていく。そして奪ったボールを確実に味方へつなぐだけでなく、時には前線へ積極的な飛び出しを見せるなど、まさに攻守に奮闘した。
 
 また振り返れば、左CK後の混戦から生まれた岩渕真奈の決勝弾も、最初のこぼれ球にいち早く反応した宇津木の左足が起点となっている(宇津木がつないだところを、さらに岩清水梓が残し、最後は岩渕のゴールにつながった)。

 試合後、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたことについて聞くと、「ほかの10人の選手たちがよくやってくれたことで、自分の仕事が明確になり、結果につながった。みんなのおかげです」と謙遜したが、大会が進むにつれてチームにおける宇津木の存在は、確実に大きくなりつつある。
 
 岩渕の決勝ゴールにつながったCKのシーンについては、「こぼれ球を狙っていて、絶対自分のところに落ちてくるだろうなと思って相手より先に動き出したら、少し入り過ぎちゃって。結果的に前に転がってくれたので良かった」と笑って振り返る。そして聞けば、0-0のまま突入した終盤になっても、選手の間では試合が延長戦やPK戦にもつれるような空気はなかったという。
 
「みんなとも話しましたが、延長まで行くような感じはなかったですね。みんながそう思っていたからこそ、点が入ったのかもしれませんし、オーストラリアはやっぱりバテていましたから。忍耐力なら日本のほうが上。最後は気持ちしかなかったですが、そういう意味ではなでしこらしさが出たんじゃないですかね」

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