危機的状況の今、長友佑都に思い出してほしい。日本代表に必要な“3年前の熱い言葉”【編集長コラム】

2021年10月11日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

今なお強く記憶に残る“金髪にして現れた瞬間”のどよめき

オーストラリア戦に向けて練習する長友。幾多の困難を乗り越えてきた経験でチームを救ってほしい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 サウジアラビア戦の黒星を受け、日本代表はワールドカップ・アジア最終予選で窮地に追い込まれた。内容も結果も伴わない現状は、どこかロシア・ワールドカップ前の状況に似ている。正確に言えば、18年6月8日、スイス代表に0-2と完敗したあとの日本代表に、だ。

 18年6月19日のコロンビア戦(グループリーグ初戦)まで2週間弱というタイミングで、日本は希望なき敗戦を喫していた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が解任(18年4月9日)され、西野朗監督が就任して3バックを導入するといった頃は「もしかしたら変わるかも」という期待があったようにも見えたが、その3バックもガーナ戦(5月30日/結果は0-2)で機能せず、4バックに戻したスイス戦もてんでダメというのが当時の日本代表だった。

 しかし、そこから日本は立ち直り、コロンビア戦で白星を掴む。その過程で今なお強く記憶に残っているのが、長友佑都の金髪だ。スイス戦に敗れた翌々日の6月10日、オーストリアのインスブルック郊外にあるゼーフェルトの練習場に、金髪にしてきた長友が姿を現わすと、記者団から「おー」という声があがった。
 
 その瞬間、チームにまとわりついていた嫌な空気がすっとなくなったような気がした。あくまでそんな気がしただけだが、事実、そこから日本代表は復調する。ロシア・ワールドカップでの奇跡のベスト16入りへの小さなきっかけを作ったのは長友だと信じており、その根拠として挙げたいのが彼のコメント。金髪にした日、長友は凛々しい表情で熱くこう語ってくれたのだ。
 
「戦術とかの前に戦えているかというところです。魂を持って本当に一人ひとりが戦って走っているのか、まだまだ皆にも自分も甘さがある。

戦術はもちろん大事です。でも、逃げなのかなと。自分がスプリントで動けてないとか、戦えてないから、戦術という方向に逃げているという捉え方もあるんじゃないかと思っています。戦う、走る、そういう基本的なところ、相手よりもそこを見せたいなというのがまずあります。

やっぱりフワッと入ったら身体も動かないし、走れなくなるので。でも、一人ひとりが危機感をもってやらないといけない、やるんだという強い気持ちを持っていたら、そのメンタルに身体はついてくるじゃないですか。その方向に一人ひとりが持っていかないと。精神的な部分は凄い大事になってくる。

スイス戦では、相手からボールを奪い返した次の展開でスプリントしなくちゃいけない時に全然できていなかった。足もとでもらう意識ばかりでは……。僕がもし相手だったら、(日本は)全然怖くない。嫌なところに前線スプリントしてこないなという感じで。スプリントして高い位置でボールをもらえるからこそゴール前で1対1の状況が生まれたりとか、局面が変わってくるのに……。結局足もとでもらって相手が帰って来たら、攻め手がないですよね。最終的にクロスをあげます、中で弾かれます、では話にならない」
 

次ページ心にはきっと誰よりも凄まじい…

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事