「なんとかしなければいけない」J2残留のその先に、相模原の高木監督が見据えること

2021年10月01日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「彼らの人生、サッカーで生きる道は伸びていくはず」

チームの勝利はもちろん、選手個々の成長も促す高木監督。簡単なパス練習にも目を光らせる。写真:滝川敏之

 選手から嫌われようとは思っていない。だが、好かれようとも思っていない。言うべきことははっきりと言う。なぜなら、「とにかく勝ちたい」からだ。

 SC相模原の高木琢也監督が、逆に質問してくる。「選手に寄り添って、いい子だね、って。それで勝てますか?」。

 すべてはチームの勝利のために。残留のために。ただ、53歳の指揮官の"本気"は、もうひとつのベクトルを向いている。

「伝えていかないといけない」
「ここで変わらないとダメ」
「あのままでは、いつまでも同じ」

 勝つためのアプローチとともに、選手たちの成長も促す。それが結局はチームとしての結果につながるからだろうけど、高木監督はより個々にフォーカスしているのではないか。それはまるで、本来はできるのになかなか成果を出せずにいる生徒に根気強く諭す教師のようだ。

「大それたことを言える立場ではないけど、少なくとも選手よりは長く生きてきているし、良いことも悪いことも経験してきているので。タイムマシーンに乗って、未来に行ったことはないけど、ずっといろんな選手を見てきたから、こうなっていくんだろうなというのは分かる」

 だから言う。強い使命感で。

「悪いほうにならないようにするためには、なんとかしなければいけない」
 
 現状、相模原はJ2の残留争いの渦中にある。高木監督は「残留できる自信というか、ある程度、やれる雰囲気はある」と手応えを口にしつつ、さらにその先も見ている。

「残留した時に、はたして何人の選手が来年、必要とされるか。レンタル組は元のクラブに帰る選択肢があるとして、そうじゃない選手は分からない。そこまで深く考えるのは大げさかもしれない。でも、ここで結果を残せば、彼らの人生、サッカーで生きる道は伸びていくはず。それが大事だし、そのためにも今、やっておかないと」

 週末のホーム水戸戦を数日後に控えたトレーニングで、ある選手に対し、やや厳しめの口調で「そうじゃないだろ」と言う場面があった。

 言いっ放しではない。その後、タイミングを見計らって、高木監督自らが何度かその選手に声をかけ、何かを伝える姿があった。

「あいつに一番、足りないのはそういうところ」を見過ごすわけにはいかなかった。だから、言った。その選手のポジションを考えれば、何よりも高めてほしいポイントがあったからだという。

 簡単なパス練習にも目を光らせる。リラックスしながらも、一つひとつのプレーをどれだけ真剣にこなしているか。高木監督はそこを見極めようとする。高い意識を持ってボールを止める、パスを出す。その地道な積み重ねが、プレーヤーとしての将来につながることを知っているから。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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