識者が選ぶ「歴代」&「現役」助っ人ストライカーBEST5|今も語り継がれるマリッチ。最大の見せ場はゴールの“そのあと”

2021年09月27日 熊崎敬

5試合連続6ゴールで浦和を天皇杯制覇に導く

恐るべき勝負強さでゴールを決め続けたマリッチ。サポーターと歓喜する姿は胸を熱くさせた。(C)SOCCER DIGEST

 浦和レッズのキャスパー・ユンカー、名古屋グランパスのシュヴィルツォク、横浜F・マリノスのレオ・セアラら今季新加入組のほか、川崎フロンターレのレアンドロ・ダミアンやFC東京のディエゴ・オリヴェイラなど、歴戦の点取り屋たちも相変わらず頼もしい働きを披露している。

 Jリーグの歴史において、数多くの助っ人が印象的な活躍を見せてきたが、ストライカーと呼ばれる選手たちのそれは、ひと際眩い輝きを放ち、チームの命運を左右する存在でもあった。「歴代」と「現役」それぞれの"助っ人ストライカーBEST5"を選ぶとすれば、どんな顔ぶれになるか。独特の視点でサッカーの面白さを伝えてくれる熊崎敬氏に訊いた。

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★「歴代」助っ人ストライカーBEST5
1位 ワシントン(浦和ほか)
2位 マルキーニョス(鹿島ほか)
3位 エムボマ(G大阪ほか)
4位 フッキ(東京Vほか)
5位 マリッチ(浦和)

 日本でのプレーは、わずか半年。だが、15年が経った今も語り継がれる男がいる。

 悪童エメルソンの代役として2005年に入団したマリッチは、恐るべき勝負強さでゴールを決め続け、天皇杯では5試合連続6ゴールで浦和を優勝に導く。決勝翌日、大原の練習場には別れを惜しむサポーターが殺到した。

 浦和のために粉骨砕身した彼最大の見せ場は、ゴールの"そのあと"。ゴールを決めると雄叫びを上げながらゴール裏に突進。ぐちゃぐちゃになってサポーターと歓喜する姿には、筆者も胸が熱くなった。

 魂のストライカーでは、市原(現・千葉)のチェ・ヨンスも印象深い。03年、磐田との大一番では、意表をついてふわりと浮かせる "パネンカ"でPKを決める強心臓ぶり。当時の指揮官イビチャ・オシムも、彼の統率力を高く評価していた。
 
 衝撃のゴールでは、07年に国立でフッキが決めた40メートル級の一撃が記憶に新しい。ワールドクラスは、ライバルをも成長させる。東京ダービーでしのぎを削った長友佑都の出世は、フッキと出会えたことも大きいと思う。

 15年で8チームを渡り歩き、外国籍選手最多得点記録(152得点)を樹立した、マルキーニョスも外すことはできない。

 いわゆるスーパースターではないが、強靭で泥くさいスタイルでネットを揺さぶり続けた。どこに行っても結果を出せるのは、パーソナリティの強さと順応性の高さゆえ。職人的点取り屋と言える。

 こんな怪物には、二度とお目にかかれないのでは。そう思わせてくれるオンリーワンが、 "難波の黒豹"エムボマ。常識の斜め上をいく、奇想天外なゴールの数々を体験できただけでも、サッカー記者になってよかったと思える。
 

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