【女子W杯】悔しさを力に変えて――川澄奈穂美に期待したくなるワケ

2015年06月25日 松原 渓

「逆境をプラスに転じる力」や「ポジティブ思考」は大きな武器。

グループリーグではなかなか出番がなかった川澄だが、自らの役割を冷静に受け止めていた。 (C) J.LEAGUE PHOTOS

 決勝トーナメント1回戦でオランダと対戦した日本は、DF有吉とMF阪口のゴールで2点をリードすると、試合終了間際にミスから1点を返されるも2-1で勝利。ベスト8に駒を進めた。グループリーグ3試合に続いて、またも1点差での勝利となったが、「選手の距離感が良くなった」(阪口)と語るように、多くの選手が攻撃面での手応えを口にした。

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 なかでも、右サイドで先発した川澄奈穂美は、80分に交代するまで攻撃的な姿勢を貫いた。20分にはゴール前に走り込んだ宮間に決定的なパスを送り、24分には大野との連係から迷わずシュート。得点こそ奪えなかったが、鋭いスルーパスや積極的なシュートで決定機を演出した。試合後に自身のプレーを振り返った際には、「ボールを持ったらまずゴールに向かうことを意識しました」と答えている。

 鮮烈な存在感を残し、ブレイクした2011年のドイツ・ワールドカップ以降、川澄はほぼすべての大会を主力として戦い、先発に名を連ねて来た。だが、今大会の初戦となったスイス戦のスタメンに、川澄の名前はなかった。

 第2戦のカメルーン戦は先発し、先制点をアシストしたが、その後に途中交代。第3戦のエクアドル戦は出番がなく、グループリーグ3試合の出場時間はわずか56分に止まった。

 しかし、川澄自身はその状況について「練習の感じで次はスタート(先発)だな、とかサブだな、と分かるので、練習のなかから試合に入るイメージを持つようにしています」と、冷静に受け止めていた。

 その答を聞いて、記憶のなかにある場面が呼び起こされた。

 4月に行なわれた、なでしこリーグの試合でのことだ。所属するINACで、なかなか攻撃のスイッチが入らないチームに対し、ハーフタイムに指揮官のカミナリが落ちた。
 
 試合後にミックスゾーンに現われた川澄は、そのカミナリが自らに直撃したことにあえて触れ、「自分に足りないものがあったと受け止めています」としながらも、「(怒られることは)期待の表われだと感じています」と答えた。

 そういった「逆境をプラスに転じる力」や「ポジティブ思考」は、川澄の武器である。

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