【識者コラム】日程、補強、コンディショニング… 浦和の無敗優勝を後押しした「プラスの連鎖」

2015年06月21日 加部 究

出だしに躓くも主軸とバックアップの見極めを整理して、5月の首位攻防戦に臨む。

9節のG大阪戦では、浦和の守備陣が宇佐美を抑え込んだ。写真:田中研治

 浦和にとって、すべてが第1ステージ制覇のために淀みなく流れた。逆に依然として戦国模様が継続中のリーグを無敗で突っ走るには、こうしたプラスの連鎖が不可欠だったのかもしれない。
 
 まず公式戦3連敗でリーグ開幕を迎えたことも、極限まで危機感を募らせ最大限の集中力を引き出した可能性がある。相手は昨年J2を記録的な独走で制した湘南。その勢いに呑み込まれず、しっかりと叩くことがスタートダッシュの条件だった。
 
 スケジュールもしっかりと浦和の背中を押した。ACLで3連敗したこともあり、サポーターも含めて確信が持てなかった序盤で、4節までの3試合が昇格組との対戦だった。広島との分けを挟み、昇格3チームからすべて確実に勝利を収めたことで、上昇のための足固めができた。
 
 またACLでの模索も、新加入組が多かっただけに、結果的にはリーグ戦の佳境に向けての良い準備につながった。試行錯誤のなかで、石原直樹の離脱など誤算もあったが、武藤雄樹やズラタンのフィットや興梠慎三の回復など収穫も得られた。
 
 こうしてミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、主軸とバックアップを見極め整理しながら、決戦の5月を迎えるのだ。9節(2日)、埼玉スタジアムに迎えたのはG大阪。昨年のリーグ終盤には苦杯を喫し、そこから西のライバルに三冠への加速を許した。しかし今年は見事に雪辱を遂げる。終了6分前に武藤―宇賀神友弥とつなげる左サイドの崩しから、ズラタンが決勝ゴール。内容的にも文句のない結果を手にした。
 
 ただしここでも天は若干浦和に微笑んでいる。リーグもACLも巻き返し途上にあったG大阪は、過密日程の真っ只中にあった。特にヴァイッド・ハリルホジッチ新体制の日本代表でフル稼働状態に突入した宇佐美貴史には疲労の色が濃く、長谷川健太監督も極力休ませたかったが、皮肉にも連続得点記録が途切れないのでピッチに立たせるしかなかった。もちろんそれは浦和の集中した守備の賜物だが、珍しく"時の人"が元気なく沈黙した。
 
 逆に12節(5月16日)は、久々に痛快な大爆発を見せた。勝点1差で背後につけるFC東京を4-1で叩きのめした一戦は、優勝へ大きく弾みをつけ、チーム内にも確信を広げたはずだ。開始4分、均衡を破ったのは、やはり左からの崩しだった。武藤から宇賀神に渡り、低く速いクロスに李忠成が軽く触れてネットを揺すった。
 
 さらに42分、今度は縦へのクサビを受けた興梠が左へ展開。宇賀神が逆のポストまで振ると、フリーの関根貴大がボレーで叩いた。また後半開始早々の47分にも、右から関根が崩して武藤がゴール。攻撃に転じると最前線に5枚が張り出す浦和の特徴が最大限に発揮され、面白いようにチャンスが連なった。

次ページ全員に浸透した献身性が、接近した各試合でわずかな違いを生み出してきた。

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