日本にとって帰化選手に頼る中国はくみしやすい相手だった。試される10月、森保監督は“適切な絵”を描けるか?

2021年09月08日 清水英斗

確かに3人の帰化選手たちは個の力を持っていたが…

ほぼ90分を通して主導権を握った日本が中国に1-0の勝利を収めた。(C)Getty Images

 カタール・ワールドカップ・アジア最終予選の中国代表対日本代表は、日本が1-0で勝利を収めた。

 中国は4人の帰化選手を集めるチームとして注目されたが、実際はそれほどの脅威ではなかった。2トップの一角で出場したエウケソンは、重さと強さを備える選手だが、吉田麻也はデュエルの仕方を工夫して戦った。先に身体を当てて相手の体勢を崩し、ムキになってきたところでファウルをもらうなど、巧みに駆け引きをする場面が何度もあった。

 62分から出場したアラン、アロイージオの2人は、激しい球際のバトルを仕掛け、受け身だった中国を活性化。しかし、いかんせんプレッシングに連動性がないため、日本は慣れればかわすことを苦にしなくなった。

 ボールを早く動かせば、2トップの裏、サイドなど、簡単にスペースが見つかる。最初は自陣に追い込まれた吉田が、縦パスをカットされるなど危うい場面もあったが、その後は柴崎岳や遠藤航が中継に入り、安定してかわすようになった。

 確かに試合に出場した3人の帰化選手たちは個の力を持っていた。しかし、日頃から欧州サッカーで戦う日本代表選手にとって、個の局面は問題にならない。むしろ日本の場合、東京五輪代表でも見られたようにビルドアップに課題があり、オマーンのような組織立ったプレッシングを仕掛けてくるチームのほうが苦手だ。今回、帰化選手の個の力に頼る中国は、日本にとってはくみしやすい相手だった。
 
 帰化選手といえば、かつて日本もラモス瑠偉や呂比須ワグナー、田中マルクス闘莉王など、何人かの選手が日本代表として戦ったが、今は当時とはルールが違う。現在のFIFAの規定では、帰化選手がサッカー代表に入るためには、国籍変更だけでなく、その国に5年以上居住する必要がある。それを満たす帰化選手となると、必然的に年齢は上がってくる。

 スタメンで出場したFWエウケソンは現在32歳、62分から出場したアランも32歳、アロイージオは33歳だった。元エヴァートンのDFティアス・ブラウニングの場合は、祖父が中国人であるため、5年の居住条件を必要とせず27歳と若かったが、ブラジルからの帰化選手3人は、いずれもベテランだ。

 身体面だけを考えれば、サッカー選手は24歳から25歳でピークを迎えるが、彼らはそれを大きく過ぎている。帰化選手による代表強化は、ハイレベルなチームが頂点を目指し、しのぎを削るワールドカップや最終予選でも有効かどうかは疑問符が付く。
 

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