メッシ退団に見るスペイン勢衰退の危機。元R・マドリー日本人スタッフが明かすリーガ特有の“裏事情”

2021年09月04日 サッカーダイジェストWeb編集部

ラ・リーガのみが採用している「サラリーキャップ」

バルサ退団会見で涙したメッシ。なぜ愛するクラブを追われる結果になったのか。(C)Getty Images

 今夏の移籍市場は、リオネル・メッシとクリスチアーノ・ロナウドという2大スターが、それぞれパリ・サンジェルマンとマンチェスター・ユナイテッドに新天地を求めるなど、小さくない動きがあった。とりわけ、バルセロナのシンボルだったメッシの電撃退団は世界に衝撃を与えた。

 なぜ、メッシはバルサを退団しなければならなかったのか。そして、最大のスターを失ったラ・リーガの未来は?

 スポーツマネジメントのMBA(経営学修士号)を取得できるレアル・マドリーの大学院に日本人として初めて合格し、卒業後はフロントスタッフとして、世界屈指のメガクラブで働いた経験を持つ酒井浩之氏に、リーガ特有の裏事情を明かしてもらった。

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【動画】世界が注目!メッシのパリSGデビュー戦をチェック
 バルセロナの至宝だったアルゼンチン代表FWリオメル・メッシのパリ・サンジェルマン移籍は、あまりに突然のことで、ファンはもちろん業界関係者にも衝撃を与えました。改めて、何が起こっていたのかを整理してみたいと思います。

 今回、退団の原因となったのが、欧州リーグでラ・リーガのみが採用している「サラリーキャップ制度」です。これはラ・リーガのハビエル・テバス会長が2013年の会長就任後、最初のタスクとして与えられたクラブの債務削減を目的とした大改革の一つで、アメリカのNBAやMLSを参考に導入されたと言われています。

 サラリーキャップは各チームが保有する個々の選手の契約額、および全選手の契約年俸の総額を毎年一定の上限を設けて規定する制度であるため、支払いが不可能になりかねない非現実的な金額での契約を回避することができます。

 そして長期に渡った分割払いでの契約を制限することで、当時リーグとして問題であったクラブの赤字経営を立て直すべく、スペイン政府スポーツ上級委員会(CSD)とスペイン・プロリーグ機構(LFP)が「ラ・リーガ参加クラブが選手に支払う給与合計は、収入の70%以下でなければならない」というルールを導入したのです。

【PHOTO】ついに新天地デビュー!ネイマールとの交代でパリSG初出場を果たしたリオネル・メッシを特集!
 

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