「感動した」出演したジーコが“亡き父からの声”に本気で涙…ブラジルでオンエア中のCMが話題【現地発】

2021年08月31日 リカルド・セティオン

驚きのあまり倒れてしまうことを恐れて救急車がスタンバイ

ジーコ出演の感動的なCMが話題を呼んでいる。(C)Getty Images

 先日オンエアされたあるCMが、ブラジルで大きな反響を呼んでいる。

 ブラジルの大手通販サイト『メルカード・リブレ』は、最新のテクノロジーを駆使して感動的なCMを作り上げた。その主役は日本の皆さんにもお馴染みのジーコだ。
 
 舞台は夜のマラカナン・スタジアム。ジーコはこの"聖地"で334点ものゴールを決めた。しかし1986年に亡くなった彼の父は、一度もそれを生で見ることがなかった。

"サッカーの神様"は語る。

「父は心臓に問題があり、過度に興奮することを禁じられていた」

 久しぶりにフラメンゴのユニホームに袖を通し、マラカナンのピッチに立つジーコ。そこに突然こんな声が流れてくる。

「ジーコ、ああ我が息子よ、私の声を聴くのは久しぶりだろう」

 なにが起きたのかと、最初は訳の分からない様子のジーコ。それは忘れることのない父の声だった。

「お前が小さな頃から、お前のゴールを見ることは、私にとって大きな喜びだった。ただひとつ残念でならないのは、マラカナンでゴールする姿を生で見られなかったことだ」

 息子の瞳が赤く潤む。

「だから今日、お前にひとつ頼みがある。あと1ゴール。たった1ゴールでいいから、もう一度決めてくれ。今度こそは近くでその雄姿を見守ろう」

 ジーコはドリブルしながらゴールに向かい、マラカナンでの生涯335ゴール目を決めた。そして両手を突き上げ、空を見上げた。

「このゴールは、父さんに捧げる。きっと天にまで届いていることだろう」

【動画】まさかのサプライズにジーコが本気で涙!ブラジルで話題沸騰のコマーシャル
 実はこの撮影の内容はジーコには、すべてシークレットだった。彼はただマラカナンでゴールを決めるという単純な撮影だと信じていた。だから父の声が聞こえてきた時のジーコの驚きの表情と涙、そしてゴールを決めた後の笑顔は本物だった。

 ジーコはそれまでも度々、父にマラカナンでのゴールを見てもらえなかったことを残念がっていた。それを知った撮影班が、ジーコの実家に残っていた数本の古いカセットテープをもとに、最新の技術を駆使して250語からなる父からのメッセージを作り出したのだ。

 ちなみに、ジーコが驚きのあまり倒れてしまうことを恐れて、撮影の間中ひそかに救急車がスタンバイしていたという。

 この、CMには「感動した」「泣きそうになった」「ジーコが久しぶりに身近に帰ってきてくれた気がした」といった多くのコメントが寄せられた。

 すでに、「今年のCM大賞間違いなし」とも言われている。ジーコの選手としてのすごさを改めて思い出させるCM。日本の皆さんにもぜひ見てもらいたい。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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