オフ明けの相模原の練習グラウンド、ピンと張りつめた緊張感――高木監督が語気を強めた理由

2021年08月19日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「今日はちょっと、そういうのが薄らいでいた」

細部にこだわる指導の中で、サッカーの原理原則を重視する高木監督。そこが疎かになれば厳しく戒める。(C)SOCCER DIGEST

 8月14日に行なわれたJ2リーグ第25節のヴァンフォーレ甲府戦で、SC相模原は2-1で白星を掴む。川上竜の強烈なミドルで先制し、一時同点に追いつかれるも、藤本淳吾の落ち着き払ったPKで勝ち越す。

 3試合ぶりの勝利の数日後、オフ明け最初のトレーニングで、対人に主眼を置いたメニューが始まってしばらくすると、高木琢也監督が「ちょっと一回止めて」と声を上げる。そして、選手たちに向かって「なんで簡単に前を向かせるんだ」と語気を強めた。

 練習再開後は、それまで二手に分かれていたグループをひとつにして、指揮官はすべての選手の一挙手一投足に目を光らせた。

「今日見る限りでは、ちょっと緩んでいます。たぶん休みが多かったからかもしれない」

 トレーニングを終えた後、高木監督がこの日の選手たちの様子について、自身がどう見ていたか、どう感じていたかを説明してくれた。

「休みがあって、少し頭が働いていないのは分かるけど、プロなんだから。準備はしてこないといけない」

 トレーニング前のミーティングでは映像を見せながら、「競争心を持ってやらないとダメだ」と発破をかけたという。だが、件の対人のメニューでは、選手たちが表現したものに対して、どうしても納得がいかなかった。

「前を向かせてはいけないのに、簡単に前を向かせているし、ボールを預けたら預けっぱなしで、追い越そうともしない」
 
 チャレンジをして、たとえそれが失敗に終わったとしても、何も言わない。だが、サッカーの原理原則が疎かになれば、黙ってはいない。

「みんなで共通させるべきところで勝負する。切り替えとか、際で身体を張るとか、最後まであきらめない姿勢を出すところとかが大事。今日はちょっと、そういうのが薄らいでいた」

 休み明けで、仕方がない部分はあるかもしれない。それは理解しているが、だからといって"なあなあ"では済まさない。一切の妥協をするつもりもない。なぜなら、「勝つために来た。このチームを(J2に)残すために来た。それしか考えていない」からだ。

 6月の途中就任以降、ここまで9試合を指揮。最初は3連敗と難しい時期が続いたが、その後の6試合は2勝3分1敗と着実に勝点を積み上げている。直近の甲府戦の勝利で最下位から脱した。

 間違いなくチームとして上昇傾向にあるなかで、今一度、たがを締めるための本気の檄だった。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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