市川大祐が見た東京五輪。デザインされたセットプレー、ストライカーの重要性…メキシコ戦敗戦を日本全体の経験に!

2021年08月08日 サッカーダイジェストWeb編集部

デザインされたセットプレーから失点してしまった

市川氏は通用した部分も多かったからこそ、課題もハッキリと浮かび上がった大会だったと振り返る。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 3位決定戦はメキシコに1-3で敗れ、日本の53年ぶりのメダル獲得は叶いませんでした。

 全体的に動きが重いというか、反応が遅いというか、いろんな局面でそんなところが見られましたね。

 身体的な疲れは間違いなくありますし、スペイン戦に敗れ、決勝に行けなかったという精神的なダメージもあったと思います。それでも、気持ちの部分でも負けていたわけではなないですし、疲労があるなかでもプレーは出来ていたと思います。良い緊張感のなかでのプレーは、疲労も心地よさを感じられる場合もあります。

 ただ、結果が出ていたなかで疲れも上手くコントロール出来ていたものが、ひとつの敗戦、ひとつの失点で表面化するというか、抑えきれなくなってしまった。一つひとつのプレーはしっかりと予測できていても、それに対する反応、目で見て身体で反応するまでの伝達が遅くなったというか、そんなイメージを持ちました。

 また、メキシコはグループステージで対戦した際には、もう少しショートパスを使って狭い局面を突破しようという意識が強く、それに対して日本もコンパクトに守備を形成し、ボールを奪うことが出来ていました。

 しかし3位決定戦でのメキシコは、効果的にロングボールを織り交ぜてきました。日本のコンパクトな守備をひとつの大きなパスでひっくり返し、そのセカンドボールを拾い、高い位置から攻撃を仕掛けてくる、一度対戦していたからこそ練り上げられたプランを持っていたように感じます。

 メキシコは前線でも起点を作れていましたし、起点が作れなくても、はね返されたボールに素早く反応し、セカンドボールを拾うことが徹底されていました。さらにロングボールで日本の陣形がある程度間延びしたなかで、ショートパスでリズムを作り、オープンサイドに展開されることも多かった。
 
 日本からすれば、今までボールを奪えていたところで奪えず、その後の攻撃にリズムが生み出せなかった。自分たちが強みとしていた部分でボールを奪いきれず、球際の強度や粘り強さを発揮できなかった。

 そんななかで、PKとセットプレーで失点を重ねてしまいました。

 PKを与えたシーンでは、久保建英選手と遠藤航選手の間を割られてしまい、FKの場面ではディフェンスラインを揃えきれず、吉田麻也選手と冨安健洋選手のラインと、田中碧選手、遠藤選手のラインでギャップが生まれてしまっていました。CKからの失点シーンでは、後ろから走り込んできた選手を遠藤選手がマークしていたのですが、キックの瞬間に、その遠藤選手のコースに相手選手が立って、膨らんで入らざるを得なくなった結果、マークが間に合わなかった。

 どこまで意図されたプレーだったかは分かりませんが、ある程度デザインされたものに感じましたし、それ以外の局面でもメキシコは日本に対してのゲームプランをいくつも用意して、忠実に実行してきたように感じました。

 対して日本は、守備の部分ではボールをはね返す、セカンドボールを拾う、それを攻撃に繋げる回数が少なかった。今までの強みとして、中央で吉田選手、冨安選手がしっかりとボールをはね返し、セカンドボールに対しても予測して反応していました。それが少し遅れる場面もあって、相手フォワードが落ちてきたところで起点を作られるシーンがいつもより多くなってしまった。

 またチーム全体としても球際、強度、粘り強さ、選手間の距離も開くことがあって、連動する動きも攻守に少なくなってしまいました。
 

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