【中断明けの青写真|琉球】新加入選手を交えたレギュラー争いが活発。樋口監督の“眼力”にも注目

2021年08月06日 仲本兼進

15節の山形戦以降、雲行きが怪しくなる

就任3年目を迎える樋口監督。卓越したパスワークを生命線とするアクションサッカーでJ1昇格へと邁進する。写真:滝川敏之

 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J2のFC琉球を取り上げる。

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 シーズン後半戦に差し掛かり、野戦病院と化したチームにとっては恵みの中断期間と言えよう。

 樋口靖洋監督が率いて3年目となるチーム戦術は、ボランチの上里一将を中心とした卓越したパスワークを生命線とし、攻守の切り替えを鮮明に人もボールも動くアクションサッカーを強調している。

 そして何より勝利を手繰り寄せているのはワイド攻撃であり、サイドハーフの風間宏矢とSBの田中恵太から放たれる右クロスに、阿部拓馬や池田廉、今季加入の清武功暉、清水慎太郎らが空中戦の強さを活かしてネットを射抜く。現時点での総得点38に対し、クロスからの得点は15得点と全体の約4割を占めている。

 一方守備では、李栄直が開幕前に負傷したことで大卒2年目の知念哲矢をスタメンに抜擢。以降、チームを前へと押し上げる斜めのパスや、空いたスペースを埋めるカバーリング能力の高さを披露し続け、今や攻守において欠かせないCBに成長している。
 
 また、手術を経てリハビリ中だったGKカルバハルに代わって田口潤人が出だしから守護神となると、明確なコーチングで味方を巧みに動かしながら、相手が狙うボックス内への進入を阻み続けるシーンを生み出し、出場した試合でのクリーンシートは7試合を数えた。

 田中の右クロスから生まれた池田の開幕戦ゴールが決勝点となり、勝利したジュビロ磐田戦以降、引き分けた第6節・大宮アルディージャ戦をはさみ、8戦無敗(7勝1分)。第10節終了時点で8勝1分1敗と破竹の勢いで勝点を積み重ね、アルビレックス新潟とともに昇格圏内を維持し続けた。

 しかし、ゴールデンウィークの連戦を越えた第15節・モンテディオ山形戦以降、雲行きが怪しくなる。CB岡崎亮平が負傷したのを皮切りに田口、池田、田中、そして左SB沼田圭悟とレギュラークラスが相次いで故障。さらにオリンピック中断前最後の試合となる第23節・大宮戦でも、上里が左膝を痛め途中交代するアクシデントが発生し、チームにとって大きな痛手となった。

 とりわけ、攻守に貢献していた両SBの不在は大きく、サイドハーフとのユニットで勝利を手繰り寄せていたワイド攻撃が削られる要因となった。幸か不幸か8月9日の再開までリーグ戦が休止となり、傷を癒す期間として充てることができるが、復帰時期は大方早くて8月中旬、上里と沼田は8月下旬、池田は9月上旬までかかる見込みである。
 

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