天国か地獄のメキシコ戦。切に願うのは吉田麻也の“3度目の正直”【東京五輪/編集長コラム】

2021年08月05日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

鍵を握る森保采配。心身の状態を見極めたうえでのスタメン選びがポイントだ

キャプテンとして申し分のない働きをしている吉田。是非、メダルを獲得してほしい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

「ただのオリンピアンとメダリストではかなり違う」

 過去2度の五輪を経験している吉田麻也の言葉には十分な説得力がある。4位で脚光を浴びるケースは稀で、やはり五輪での主役はメダリスト。この大舞台でメダルを獲得できるか否かは、その後のキャリア、人生を大きく左右すると言っても大袈裟ではないだろう。

 その点でメキシコとの3位決定戦は、"天国か地獄"を決めるゲームとも言えるだろう。表現がややオーバーかもしれないが、それぐらい勝者と敗者には大きな差が出る。

 なかには、グループリーグで破ったメキシコなら今回も勝てるだろうと楽観視する向きがあるかもしれない。しかし、グループリーグの時のメキシコとはだいぶ違う気がする。今大会の準々決勝で韓国を圧倒し、続く準決勝でブラジルを苦しめられた彼らは、この前の日本戦よりも明らかにインテンシティが高く、プレーのメリハリもあった。

 グループリーグの日本戦ではフワッとした感じで入ったようなメキシコも、今回は「同じ相手に二度負けるわけにはいかない」と最初から飛ばしてくるはずだ。日本にとって、今のメキシコは疲労の蓄積はあるにせよグループリーグの時よりも厄介な相手に映る。

 そんなメキシコに仮に負けたら、日本はロンドン五輪と同じ4位。正直、その結果に新鮮さはなく、むしろ、「今回もメダルに手が届かなかった」とネガティブな印象を残す可能性が高い。勝てば日本代表への関心度がより高まりそうだが、負ければその逆。サッカー人気の低迷を招く恐れさえある。
 
 メキシコとの大一番で勝利を掴む鍵のひとつは、森保監督の采配だろう。スペイン戦で林、久保、堂安に代わって投入された上田、三好、前田はお世辞にも機能したとは言い難く、日本はゴールを奪えないまま0-1で敗れた。結果的に森保采配は当たらなかったわけで、敗戦の一因が監督にあったと言われても仕方がない。

 名誉挽回できるかという意味でも注目の森保監督は、果たしてメキシコ戦でどんなオーダーを組むのか。ここまでのレギュラーをそのまま使うのか、それともあまり出番がなく体力的にフレッシュな選手を抜擢するのか。選手たちの心身の状態を見極めたうえで、指揮官が下す決断は? いずれにしても、スタメン選びがひとつの大きなポイントになる。

 コロナ禍で3位決定戦までやる意義が個人的にあまり見当たらないが(両国銅メダルでいい)、やるからには勝って終わりたい。オーバーエイジ発表後からキャプテンとしてチームを鼓舞してきた吉田には、是非、3度目の正直を現実のものにしてほしいと、切に願う。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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