【中断明けの青写真|札幌】“マンツーマン戦術”のさらなる洗練へ。A・ロペスの穴埋めは…

2021年08月03日 斉藤宏則

戦術上で鍵となったふたつのポイント

今季もマンツーマン戦術を採用する札幌。理解度を深めている。写真:田中研治

 東京五輪開催でJリーグは一時中断。その間、各チームは戦力補強やミニキャンプ実施など、再開後に向けて準備を進めている。五輪後はいかなる戦いを見せてくれるか。ここでは、J1の北海道コンサドーレ札幌を取り上げる。

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 延期となっていた4節のガンバ大阪戦が7月30日に組み込まれ(0-2で敗戦)、これもひとつの指標になりそうだが、注目および期待したいのは戦術面のさらなる洗練だ。

 昨季途中からマンツーマンディフェンスによるハイプレスを採用し、ピッチ全体で各選手が相手選手を追走するやり方を続けてきた。その戦術は今季も継続され、序盤戦こそ後半に運動量が落ちて失点する、あるいは得点が奪えないという試合が続いたが、現時点ではマンツーマンによって生まれるいくつかの課題が改善され、戦術は洗練されてきた印象だ。

 そのカギとなったポイントは大きくふたつある。まず、マンツーマンで守備を行なうがゆえに自陣ゴール前で相手と同数になり、そこで攻めきられてしまうことが昨季は散見された。しかし、今季は3-4-2-1のボランチが最終ラインに加わり、数的優位の場面も増やすことで自陣での守備を安定させた。

 副作用として後ろに重くなり、中盤でのプレスが弱くなったり、攻撃に移った際の圧力が足りなくなっていたが、そこについては試合を重ねるごとにボランチの位置取りを調整し、調度いい着地点が見つけられてきたように見える。
 
 もうひとつはハイプレスを仕掛ける場面と、そうでない場面との使い分けが明確になってきたこと。「メリハリがついてきた」とミシャことペトロヴィッチ監督や、選手たちは口々に発している。昨季や今季序盤までは戦術のベースとなるハイプレスの部分を敢えて終始徹底し、そのため前述したように後半に運動量が落ちてしまっていたが、ここについても試合を重ねるごとにプレスの出力が調整され、90分間を考えたペース配分が上手くなされてきた。

 再開後はそのマンツーマンのさらなる効率化に注目したい。すでに中断直前の数試合では、最終ラインをより高く押し上げたコンパクトな陣形が作られ、プレッシングで奪ったボールを素早くパスで展開できるようになっていた。守備と攻撃がより一体化している。

 コンパクトにしたうえでタイトなマンマークをするため中盤でバタバタした展開になることも多いが、そのあたりをどのように落ち付かせるか、楽しみなところである。失礼ながらスピードのあるCBが多いわけでなく、背後を狙われる可能性もあるが、中断前はほぼ問題を感じさせなかった。
 

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