なでしこ、“ジャイキリ”のカギを握るのは――敵国スウェーデンを主戦場とするMF林穂之香の力は欠かせない!【東京五輪】

2021年07月29日 西森彰

当初はバックアップメンバーもレギュレーション変更で正式登録メンバーに

当初はバックアップメンバーだった林だが、コロナ禍のレギュレーション変更で正規メンバーとなった。2戦目、3戦目と先発出場で存在感を示している。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 グループリーグ3試合を終えて、1勝1敗1分けの綱渡りで、8強進出を決めたなでしこジャパン。メダル獲得に向けて、若手の台頭が期待される。

 イギリス戦、チリ戦と、ここ2試合で一気に存在感を増してきたのが、MF林穂之香(AIKフットボール/スウェーデン)だ。背番号は20。今回の東京五輪2020では、当初、バックアップメンバーとして選出されたが、その後のレギュレーション変更で、正規メンバーに昇格した。

 代表デビューは、2019年暮れに行なわれた、E-1 サッカー選手権のチャイニーズ・タイペイ戦。キャップ数は少ないながらも、世界と渡り合えるポテンシャルのある選手が揃った、今回のチームカラーを色濃く反映している。

 ボランチが本職で、切り替えの速さとアプローチできる範囲の広さ、そして労を惜しまぬ運動量で、チームに安定をもたらす。ここまでは、不用意なプレーが招くリスクを考慮し、アタッキングサードで自ら崩しに加わる場面は少ないが、トップ下やサイドでもプレーできる攻撃力の持ち主。シュートレンジも外国人選手並みに広く、狭いゾーンを一瞬の加速とステップワークで、すり抜けるのも得意だ。
 
 今大会の第2戦が、女子フル代表の世界大会デビュー戦。初戦の疲労を引きずる選手の分まで走って、攻守に貢献。中盤の底から前への推進力を発揮し、ミドルレンジからゴールを狙うなど、イギリスを脅かした。この働きが高倉麻子監督に認められたか、グループリーグ突破がかかる第3戦でも、引き続き先発出場。セットプレーではキッカーを任されるなど、日本チームにとって、今大会唯一の有観客試合での勝利に貢献している。

 そのチリ戦では、昨年まで、セレッソ大阪堺レディースで共にプレーした、宝田沙織(ワシントン・スピリット/アメリカ)、北村菜々美(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)らとともに、宮城スタジアムのピッチへ入場。現在は、所属クラブも、プレーする国も異なる3人だが、世界一を目指すチームで、再び、共闘している。

 ベスト8で対戦するスウェーデンは、今年、C大阪堺から移籍し、主戦場としている国だ。当然ながら、お互いにプレーの特徴を理解している部分も多いだろう。2試合続けて先発した後だけに、サブに回る可能性もあるが、事前の情報提供を行なうだけでも、チームにとっては十分なアシストだ。
 

次ページ欧州組の一員となった今、日本のストロングポイントを改めて実感した部分も

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