チリに辛勝も課題は山積み。なでしこジャパンの最大の問題は…【東京五輪/編集長コラム】

2021年07月27日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

相変わらず攻撃に躍動感がない

チリを下したなでしこジャパンだが、すっきりした試合展開ではなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[東京五輪 グループステージ第3戦]日本 1-0 チリ/7月27日/宮城スタジアム

 カナダやイギリスよりも力が劣るチリが相手だったからだろう。なでしこジャパンは前半から押し気味に試合を進めた。しかし、強かったと言えばそうではない。前半はパスひとつ見ても、ゴールに向かうというよりも近くの味方にとりあえず繋ぐシチュエーションが目に付いた。足もとでパスを受けたがる選手が多く、相変わらず攻撃に躍動感がない。

 緩急もないアタックには怖さそのものがなかったと言っても大袈裟ではない。精度の低いミドルを多用するのは、エリア内で崩す有効手段を持ち合わせていないとの見方もできる。前半に限れば可能性を感じたのは、岩渕、杉田、長谷川がボールを持った時くらいで、組織的な崩しは数える程度だった。

 ガムシャラに走って気持ちを見せるのも大事だが、そもそも今のなでしこジャパンには戦術らしい戦術が見当たらない。ボールを繋ぐことで精いっぱいで、肝心のゴールへの道筋が見えないのだ。田中、木下の奮闘もあった後半は盛り返したが、チームとしては課題が山積みである。

 
 実際、守備に目を向けても、どこでプレッシャーをかけてボールを奪うか、いまひとつ統率されていない。68分にカウンターからピンチを迎えた場面でヘディングシュートからゴールを奪われなかったのはラッキーのひと言。相手のシュートミスに助けられた印象が強かった。

 その後、田中の先制弾でリードを奪い、どうにか逃げ切ったなでしこジャパンはグループEの3位で決勝トーナメント進出を決めたが、喜んでばかりもいられない。グループリーグのような戦いぶりでは、準々決勝で優勝候補のスウェーデンに勝てないだろう。

 なでしこジャパンの最大の問題はボランチにあるか。攻撃の局面ではテンポよくボールを散らし、守備の局面では前線や最終ラインと連動しながらボールを奪いに行くというようなアクションができていない、要するに攻守両面において不足感が否めないのだ。

 ボランチのふたりが攻撃の局面でテンポよくボールを散らし、守備面でプレスのかけどころをはっきりさせれば、チーム力は劇的に向上するかもしれない。しかし、中2日で迎えるスウェーデン戦(7月30日)までにボランチコンビが覚醒できるかと言えば、現実的に考えて厳しいのではないか。

 もちろん、サッカーでは何か起こるか分からない。2018年ロシア・ワールドカップのコロンビア戦でも不利と言われながら、前半の早い時間帯に相手の選手ひとりがレッドカードで退場、しかもPK獲得と信じられないことが起きている。これで勢いに乗った日本はコロンビアを2-1で破り、その後も粘り強い戦いぶりで最終的にベスト16入りを果たしている。

 このように勢いに乗れるきっかけさえ掴めればチームが劇的に変わるケースもあるだけに、なでしこジャパンも奇跡を信じて戦ってほしい。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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