情けないなでしこジャパン。攻撃の形が見えないのは致命傷だ【東京五輪/編集長コラム】

2021年07月25日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

なぜ長谷川を2トップに近い形で使ったのか

杉田の奮闘空しく、なでしこジャパンはイギリスに敗れた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 嗚呼、情けない。自国開催なのに、グループリーグの2試合を終えて未勝利。ホームアドバンテージを生かせず、カナダ戦に続いてイギリス戦も先行される展開と、東京五輪を戦うなでしこジャパンには強さをまるで感じない。

 0-1で敗れたイギリス戦も、カナダ戦と同じく守備はある程度できていた。イギリス戦に限れば、左サイドの杉田が対峙したブロンズをよく抑えるなど奮闘した印象だ。CBの熊谷も良い対応をしていて十分な働きだった。正直、ワンチャンスをモノにされたのは仕方ない。サッカーではよくあることで、問題はむしろ攻撃陣にある。

 いや、攻撃陣というよりもチームそのものに問題があると言ったほうがしっくりくるか。誰を起点にどう攻めるか。そうしたコンセプトが見当たらないのは致命傷に映る。岩渕が先発出場しなかったから? いやいや、その岩渕がスタメンを張ったカナダ戦も正直、攻めの形は見えなかった。

 イギリス戦ではなぜ長谷川を2トップに近い形で使ったのか、そこに疑問がある。パスの出し手にも受け手にもなれて、フィニッシャーとしても期待できる長谷川は例えばトップ下で使うなどしてゲームメーカー的な役割を任せたほうが良かったというのが個人的な見解だ。

 イギリス戦では攻撃の軸がないから、ビルドアップも上手くいかないし、テンポもスピードも上がらない。仕掛けや崩しの局面において、ダイレクトで繋ぐシーンがほとんどなかったのは"迷いの現れ"だろう。そうなってしまった原因は、チームをまとめきれていない高倉監督にもあるはずだ。
 
 いずれにしても、攻撃は酷すぎた。途中出場の遠藤も機能せず、イギリス戦において決定機らしい決定機はゼロ。守りだけでは勝てないのがサッカーという事実を皮肉な形で証明したのが、イギリス戦のなでしこジャパンだった。

 2試合を終えて、この体たらく。首位通過の望みが断たれ、たとえグループ2位で決勝トーナメントに進出しても準々決勝で戦う相手はブラジル(南米予選1位)かオランダ(欧州予選1位)。3位で8強入りした場合はおそらく、初戦で優勝候補筆頭のアメリカを破ったスウェーデンと対戦することになりそうで、いずれも格上。どこと当たるにしても、メダル獲得への道は険しい。

 次のチリ戦に敗れてグループリーグ敗退となる結末だけは避けたい。9月に開幕するWEリーグが盛り上がるかどうかは今大会のなでしこジャパンの戦いぶりにかかっている。それを選手たちは改めて肝に銘じるべきだ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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