【連載】識者同士のブンデス放談「新生ドルトムントのここに注目! 香川にはこれを期待!」

2015年06月05日 遠藤孝輔

4強に割り込むための土台をしっかり築く必要がある。

トゥヘル新体制がいよいよ始動。プレシーズンツアーで日本にもやってくる(7月7日に川崎と対戦)新生ドルトムントの注目ポイントは? (C) Getty Images

遠藤孝輔:6月3日、ドルトムントでトゥヘル新監督の就任会見が開かれました。この新体制のどこに注目し、何を期待していますか?
 
中野吉之伴:クラブとしての目標設定と、それを達成するための時間をどう確保するつもりか。トゥヘルは「現在ブンデスリーガのトップグループは広がりを見せている。バイエルンだけではなく、ボルシアMG、レバークーゼン、ヴォルフスブルクという4強の存在を、我々は常に意識しなければならない」と語っていました。
 
遠藤:「我々は挑戦者だ」とも口にしていましたね。
 
中野:就任1年目からいきなり優勝を望むのではなく、この4強に割り込むための土台をしっかりと築く必要があります。そのための1年と見なすことができるかが大切かと思います。
 
 もちろん優勝を目指さない、ということではありません。あくまでもクラブの指針として、プロジェクトプランを持てるかが大事でしょう。
 
遠藤:新生ドルトムントの初陣となる公式戦は、7月30日のEL予選3回戦です(対戦相手は7月17日に決定)。それまでに日本ツアーなどもあり、トゥヘルは準備時間の少なさを強調していました。
 
 産みの苦しみを覚悟のうえで改革に踏み切るのか、当面は継続路線を歩むのか。そのあたりの判断も見逃せません。
 
中野:会見ではヨーロッパの舞台で戦うことの意義を大切にしていることを匂わせていました。ブンデスリーガに集中するつもりはないでしょう。準備期間が例年より短いなら短いなりに調整をして、プレシーズンにすべきことをシーズンに入ってからも補う形で取り入れるとも話していました。
 
 目の前の試合に勝つことだけにこだわるのではなく、自分たちが目指すサッカー(の構築)に取り組みながら、一つひとつの試合に全力で向かっていくという姿勢になるのではないでしょうか。
 
遠藤:最初は忍耐が必要になるかもしれませんね。会見では補強に関する一切の質問をNGとしていましたが、ケールが引退、ギュンドアンの退団がほぼ確定のセントラルMFに、カストロ(←レバークーゼン)とヴァイグル(←1860ミュンヘン)が加わりました。この強化についての印象は?
 
中野:カストロはレバークーゼンで攻守の要として欠かせない存在でした。故障ちだったベンダーが良好なコンディションを取り戻せば、強靭なダブルボランチが形成できます。
 
 19歳のヴァイグルは素晴らしい素質の持ち主です。試合の流れを読む力を身に付ければ、とても面白い存在になりますよ。
 
 入団1年目の今シーズンはうまくフィットしませんでしたが、ポテンシャルは抜群のギンターもいます。U-21欧州選手権(チェコで6月17~30日まで開催)で自信をつけて戻ってくれば、来シーズンは本領を発揮するかもしれません。
 
遠藤:それでもギュンドアンが抜ける穴は大きいでしょう。
 
中野:今シーズンのチームは、ゲームメイクをギュンドアンに依存しがちな欠点を抱えていました。ひとりの選手に頼ることのない、ゲームメイクの仕方をトゥヘルは考えてくるはずです。
 
 シュバインシュタイガーが抑えられると機能性を落としたバイエルンを、どこからでもゲームを作れるチームに変貌させたグアルディオラ監督のように。
 
遠藤:シャヒンという選択肢もあります。以前、中野さんはギュンドアンとシャヒンのダブル司令塔を推奨なさっていました。
 
中野:そうですね。それにマインツのガイスが加入する可能性もあります。どういう組み合わせと布陣にして、その辺りの調整をするかに注目しています。

次ページ香川にはゲームメイクにも顔を出す働きを。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事