看過できない守備面の問題。スペインに見えていた穴が日本には見えていなかった【編集長コラム】

2021年07月19日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

ペドリを止めるのはそう簡単な話ではなかった

後半から出場した田中。スペイン戦では組み立ての局面で劣勢を強いられる場面も……。写真:JMPA代表撮影

 7月17日のスペイン戦は1-1のドローという結果に終わった。素直に堂安の先制弾は素晴らしいと思ったし、選手たちもそれなりの手応えを掴んだのではないか。ただ、勝てなかったのは事実で、称賛すべき試合内容だったかと言えば決してそうではない。

 なにより気になったのは、EUROでも活躍したペドリ投入後の試合展開である。日本は押し込まれた形で、いくつか決定機を与えた。隙を突かれたわけではなく、守備を固めながらも崩された点は看過できない。

 象徴的だったのは、ペドリに何度か危険なパスを通されたシーンだろう。あれだけ引き気味に陣取り、守備意識を高めていたにもかかわらず、あっけなくパスを通されたのである。スペインに見えていた穴が日本には見えていなかった事実が、両者の実力差を物語ると言えるのではないか。

 ペドリにプレスをかければいいという単純な話ではない。おそらくそうすれば簡単にかわされて、それこそ相手の思う壺にはまるかもしれないし、かといって詰めなければ急所にパスを通される。彼を止めるにはチームとしての密な連係が必要で、今の日本にそれを実践できる力があるかとなると疑問符が付く。
 
 もちろん、後半の日本はサブメンバー主体でスペインを相手に劣勢を強いられても仕方がないとの見方はできる。そこが、個人的にはもどかしいところだ。ペドリ投入後のスペインと、ベストメンバーの日本が戦っていたらどうなっていたか、できればそういう構図でのバトルを見たかった。

 さらに言えば、田中と遠藤のボランチコンビがスペインとどこまで渡り合えるかも見たかった。この日2ボランチで先発したのは板倉と遠藤で、後半の頭から遠藤に代わって田中が投入という流れだったので、田中と遠藤の同時起用はなかった。東京五輪に臨む日本の生命線は田中と遠藤の2ボランチだと考えているので、そのふたりのコンビとしての振る舞いをスペイン戦で確認できなかったのは残念だ。

 本大会、ポゼッションに優れたスペインのような相手にポゼッションで対抗するのか、カウンター重視の戦いで挑むのかを見極めるうえで、スペイン戦での田中と遠藤の同時起用はひとつの指標になるはずだった。しかし、結果的にスペイン戦はなんとも言えない試合になった。田中と遠藤のボランチコンビを見ることができなかったうえに、1-1に追いつかれたのは日本がサブ主体のメンバーで戦った時間帯。称賛もできなければ、ダメ出しもできないという奇妙なゲームにも映った。

 日本は、スコア的には確かに善戦した。なんとか持ちこたえて先制した点は掛け値なしに素晴らしかったが、それでも──。メダルへの期待が膨らんだ試合かと言えば、そうではなかったというのが素直な感想だ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
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