驚異の身体能力は元実業団バレー選手の母親譲り。劣悪ピッチも厭わないGK谷晃生のポテンシャル【五輪代表エピソード】

2021年07月16日 安藤隆人

母はバレーボールの超名門校で全国出場

U-24日本代表の守護神候補となっている谷。育成年代から身体能力の高さは飛び抜けていた。写真:安藤隆人

 東京五輪代表の熾烈なGK争い。ホンジュラスとの親善試合でスタメンの座を掴んだのは20歳の谷晃生だった。

 バレーボールの超名門・名古屋短期大学付属(現・桜花学園)で全国大会に出場し、後に実業団でもプレーをしていた母を持つ彼は、恵まれた体格を武器にガンバ大阪の下部組織でGKとして頭角を現わした。

 2015年にU-15日本代表に選ばれると、そこから各年代の代表に選ばれ続けた。当時から彼の魅力はずば抜けた身体操作にあった。一言で言うと体の使い方が非常にしなやかで、スムーズなのだ。例えば空中のボールをキャッチングに行くときに、足のステップと手の動きがきちんと連動をして、空中で体制を整えながらボールを最高到達点でガッチリとキャッチすることができる。セービングでもディフレクションをしたときに手を伸ばす起動変化が他の選手と比べてスムーズだった。

 これは前述したバレーボール選手だった母親の影響が大きかった。よく育成年代では両親の運動歴や身長、選手本人の骨年齢などを調べて、将来的にこの選手がどのくらいの体格になるのか、どう成長期を迎えるのかを把握して選手を獲得したり、育成プログラムを立てるクラブもある。なかでも『母親の運動能力』をとりわけ重要なファクターとして重視するところもあるほどだ。

 筆者は専門家ではないので、遺伝と決めつけるのは良いことではないが、彼の身体操作を見ていると母親の運動能力を引き継いで、さらに進化をさせているようにも映る。
 
 その能力の凄まじさを見たのが、ともにインドで開催されたU-16アジア選手権とU-17ワールドカップだ。この2つの大会で正GKとして君臨した彼は、いずれもグラウンドコンディションが劣悪な中でも安定したボールフィールディングを見せた。豪雨によりゴール前がぬかるんでいたり、あちらこちら土がむき出しになって、平坦ではない、まさに『GK泣かせ』のグラウンドに対しても、大きな身体をコンパクトに畳んでバウンド側のシュートを胸でキャッチしたり、ジャンプ前の脚のグリップもしっかりとグラウンドを捉えてから飛んでいたため、セービングの範囲も狭まることはなかった。

 これは一見簡単なように見えるが、ハイレベルな技術と身体操作能力が求められるもので、泥だらけになりながらも冷静にプレーし続ける彼には大きな未来が感じられた。

「どんな場所でも自分のプレーをすることが大事だと思っていますし、GKがグラウンドコンディションなどの要因で揺らいでしまったら、チーム全体に悪影響をもたらしてしまうと思います。なので、自分はなるべく冷静にプレーするように意識をしています」

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