“特例”での五輪参戦は、久保建英の去就にどう影響するのか。マドリー番記者に訊く「リスクはある。だが…」【現地発】

2021年07月16日 セルヒオ・サントス

自国開催でなければ、反対していた可能性も大いにある

東京五輪でのパフォーマンスが久保の去就を左右することになりそうだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 レアル・マドリーは所属選手に対して、東京五輪への参加を巡り、反対の立場を取った。

 しかし、それはあくまで基本的なスタンスで、状況に応じて対応を変えている。辞退を余儀なくされたのがヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴの両ブラジル人アタッカーだ。2人とも参加を希望していたが、マドリーの方針を鑑みてブラジルはロドリゴの招集を見送った。

 ヴィニシウスの場合は、コパ・アメリカに出場したこともマイナスに働いた。続けて五輪にも参加することになれば、バカンスが大幅に短縮し、十分な休養を取ることなく新シーズンを迎える恐れがあるからだ。

 一方、ダニ・セバジョス、ヘスス・バジェホ、マルコ・アセンシオのスペイン人3選手は参加する。五輪はFIFAカレンダーに組み込まれていない大会であるが、スペインの法律により所属選手が招集を受ければ、貸し出すことを義務付けられているからだ。そこにマドリーが希望を通す余地はなく、例えばアセンシオに対してプレシーズンキャンプからの合流を要望し辞退するよう働きかけたが、選手本人が強く希望し、オーバーエイジ枠の1人として招集された。

【動画】「衝撃的すぎる!」久保建英の"連続股抜きショット"で日本が先制!
 そんな中、例外的に参加を認めたのがタケ・クボ(久保建英)だ。背景にあったのは、レンタル先のビジャレアルとヘタフェで出場機会に恵まれず、不完全燃焼のシーズンを送ったこと。さらに自国開催で、仲間がメダル獲得を目指して戦っている中で、プレシーズンキャンプに合流させるのは酷だろうという親心もあった。逆に言えば、自国開催でなければ、反対していた可能性も大いにある。

 問題は、五輪への参加が去就にどう影響するかだ。マドリー首脳陣のタケへの信頼は不変だ。ただタケに近い関係者が期待しているマドリーへの復帰の実現は厳しい情勢だ。最初に立ちはだかるのがEU圏外枠。ヴィニシウスが近々スペイン国籍を取得できる見込みだが、現時点では3つの枠は全て埋まっている。

 また仮に首尾よくヴィニシウスが取得しても、そのままタケの復帰に繋がるとは限らない。比較対象になるのがブラヒム・ディアスだ。彼は昨シーズン、セリエAの強豪ミランで活躍を見せた。すなわち現時点ではタケよりもワンランク上の評価を得ている選手だ。

 ただそのブラヒムですら、レンタル継続を検討している。そんな中で、いくらタケサイドが、期待通りの成果をあげたとは言い難かったデポルティボでの1年間の武者修行を経て2018年夏に復帰してトップチームに定着したフェデリコ・バルベルデのケースを引き合いに出してプッシュしても、いまいち説得力に欠けてしまうのが実状だ。
 

次ページ「現時点で多くのオファーが舞い込んでいるが…」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事