ジャージ姿で試合運営も経験…“サッカーエリート”三好康児が味わったユース時代の大きな挫折【五輪代表エピソード】

2021年07月14日 安藤隆人

躍動したU-17W杯後に前十字靭帯を断裂する大怪我

年代別代表でも主軸を担ってきた三好。エリート街道を歩んできた三好だが、大きな挫折もあった。写真:安藤隆人

 エリート街道を歩んできた印象がある。川崎フロンターレのお膝元である川崎市多摩区に生まれ育ち、等々力にほど近い中野島小時代から川崎のアカデミーでサッカー選手としての土台を養った。正確無比な左足を持ち、広い視野と頭の回転の速さですぐに頭角を現わすと、中2の段階でU-18チームでプレー。小柄だが数人が囲んでもボールを取られず、独特の間から冷静にパスを通す姿は大人顔負けだった。

 高校に進学すると年代別代表もU-16日本代表、U-17日本代表ともに主軸となり、2012年のU-16アジア選手権ではイランのボコボコのピッチをものともせずに、ボールの収まりどころとして機能。表情を変えることなく、冷静にボールをコントロールする姿は驚きだった。
 
「ピッチコンディションを言い訳にしていたら、それだけ力が足りないということになると思います。このコンディションで自分に何ができるか考えるようにしています。足もとばかりに気を取られていると、周りが見えなくなるので、イランという環境でむしろ自分を鍛えてもらっている印象があります」

 大会中に話を聞いた時、こちらが驚くほど冷静なコメントが返ってきた。頭の回転の速さが伝わり、かつただ淡々としているのではなく、心の奥に秘めた向上心も窺える。イランでのコミュニケーションを通じて、彼は天才やエリートという括りではなく、冷静に自分を見つめて技術の向上に集中できる選手であることが分かった。

 三好を語る上で印象的なエピソードがある。それはUAEで開催されたU-17ワールドカップのあとの出来事だった。ベスト16進出に貢献した彼が、川崎U-18で躍動する姿を見ようと思っていたのだが、冬に膝の前十字靭帯断裂という大怪我を負い、そのプレーを見られなくなってしまった。

 これは三好にとって初めての大怪我で、状態は予想以上に悪く、全治まで10か月近くかかることになった。プリンスリーグ関東の川崎U-18の試合を取材に行くと、麻生グラウンドの入り口に設置された受付にジャージ姿で座る彼の姿があった。
 

次ページ前向きな言動でチームのために雑用を積極的にこなす姿があった

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