「絶対に謝らない」PK失敗の英代表ラッシュフォード、人種差別被害に対して毅然とした態度を表明

2021年07月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

ファンには謝罪、そして感謝を述べる

PK戦の末に敗れると肩を落としたラッシュフォード。だが、誹謗中傷には断固として立ち向かう姿勢を見せた。  (C)Getty Images

 現地時間7月11日、イングランド代表はEURO決勝に臨んだが、イタリア代表との激闘の末、PK戦で敗れた。

 開始早々に先制したイングランドだが、後半に追いつかれる。延長戦でも決着がつかず、PK戦では2人目を終えて2-1とリードしながら、3人目のマーカス・ラッシュフォード、4人目のジェイドン・サンチョ、5人目のブカヨ・サカが立て続けに失敗し、1966年のワールドカップ優勝以来となる主要大会での栄冠に、あと一歩及ばなかった。

 このPKを失敗した3選手に対して、SNS上では誹謗中傷および人種差別的な行為が確認され、イングランドサッカー協会(FA)は、「選手たちを支えるために全力を尽くし、責任者に可能な限りの処罰を求める」と怒りの声明を発表するまでに至っている。

 そんななか、渦中のラッシュフォードが12日、自身のSNSを更新。「どこから手をつけていいのかわからないし、今の気持ちをどうやって言葉にすればいいのかもわからない」と今の胸中を告白している。

 23歳のイングランド代表は、「僕はいつでもペナルティの覚悟をしているが、何かがうまくいかなかった。(中略)チームメイトを失望させてしまったような気がした。みんなを失望させてしまったような気がした」と綴り、「僕は寝ている間だってペナルティを決められるのに、なぜそれができないのか? ボールを打ってから何度も頭の中で再生されていて、この気持ちをうまく表現する言葉がない」と明かした。

「決勝戦。55年目。1ペナルティ。歴史に残る。残念としか言いようがない。もっと違った結果になっていたらと思うと…。本当に申し訳ない」
 
 ラッシュフォードはチームメイトに対しては「最高の兄弟。この絆は崩れることはない。皆の成功は僕の成功、皆の失敗は僕の失敗」と感謝を述べた。

 一方で、自身やサンチョ、サカに対しての人種差別的な被害については、毅然とした態度を見せた。

「僕は自分のパフォーマンスについて様々なことを書く立場の人間になった。自分のパフォーマンスに対する批判は1日中でも受けるし、僕のPKは十分ではなく、入れるべきだった。だが、僕が誰であるか、どこから来たのかについては絶対に謝らない」

 そして批判ではなく、エールを送ったファンにも感謝を伝えている。

「今日受け取ったメッセージには本当に圧倒された。ウィジントンでの反応を見て、僕は涙が出そうになった。いつも僕を包み込んでくれるコミュニティが、僕を支え続けてくれる。

 僕はマーカス・ラッシュフォード。23歳、黒人男性。南マンチェスターのウィジントンとウィゼンショー出身。ほかになにもなくても、僕にはその証がある。

 優しいメッセージをありがとう。もっと強くなって戻ってくるよ」

 心無い批判の一方で、彼をかばう人々は間違いなくいる。ウィジントンのコップソン通りにあるカフェの壁に描かれたラッシュフォードの壁画は、試合後にファンによって破壊され、ひどい落書きをされた。だが、地元住民はそれをビニールで覆い、上から応援のメッセージを描くことで選手をかばった。その想いは、本人にも届いたようだ。

 イングランドのみならず、世界ではSNS上の誹謗中傷・人種差別の被害は後を絶たない。サッカー界に限ったことではなく、今後はより具体的な対策が求められる段階にある。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
 

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