日本を救った堂安。ホンジュラス戦の3点目の価値は極めて高かった【編集長コラム】

2021年07月12日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

そのゴールの価値が高かった理由は…

試合後半に貴重なゴールを決めた堂安。10番の貫禄を見せつけた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 東京五輪に出場するホンジュラスも圧倒した前半のU-24日本代表は素晴らしかった。堂安と久保の素晴らしいコンビネーション、酒井の鋭いプレスバックをはじめ、個人を見ても、チームとしても良いところが目立った印象だ。

 オーバーエイジの3人(酒井、遠藤、吉田)が加わってから、日本は明らかに安定感を増した。とりわけ、遠藤と田中のボランチコンビと4バックの落ち着きは特筆に値するレベルで、だからこそ攻撃陣も安心してプレーできたのだろう。

 しかし、後半に入ると日本の勢いが衰える。ホンジュラスがフレッシュなメンバーを早めに投入したからでもあるだろうが、前半ほど押し込めなかった原因は他にもある。

 欠けていたのはひと言で組織力。スタメンの11人がまるで糸でつながっているようにも見えた前半に比べれば、後半はチームとしての機能性がいまひとつだった。田中が交代したあとの中盤は組み立ての局面でややスムーズさを欠き、酒井と吉田がピッチを去ったとの最終ラインはどっしり感が少し失われた感もあった。

 本番を想定すると、田中、遠藤、酒井、吉田、冨安はポジション的にも"無傷"で済まない可能性が高い。彼らが累積警告で出場できない試合もありそうだが、そういう事態を乗り越えて勝利を掴まないといけない。その意味で、田中、酒井、吉田らが抜けたあとのホンジュラス戦こそ本番に向けた"貴重なテスト"であり、そこで相馬のアシストから堂安がスライディングで押し込んだゴールは極めて価値が高かった。
 

 2-0から1点を返され、76分に前田が決定機を外す。ホンジュラスに流れが傾きかけたタイミングで、日本を救ったのが堂安だったのだ。3-1となったあと、ホンジュラスから勢いが消え去ったのは決して偶然ではないだろう。

 吉田、酒井、遠藤の参戦でチーム力がアップしたのは確かだ。しかし、彼らに頼ってばかりではきっと金メダルに届かない。サブを含むU―24世代の選手たちがいつどこで起用されても一定以上のパフォーマンスを保証しないと、ハードスケジュールでの短期決戦(今大会はほぼ中2日で行なわれる)を勝ち抜けないはずだ。

 オーバーエイジなどを欠く今回のようなシチュエーションは本大会でもきっとある。それをホンジュラス戦で体感でき、緊張感があるなかで3-1と突き放せたのは大きい。堂安が決めたあの3点目は、選手をより団結させるうえで、そしてチームに自信を与えるうえでも、大きな一発だった。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)

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