魅力的になったイタリアとタレントを持て余すイングランド。EURO決勝を名手バルダーノはどう見ているのか【現地発】

2021年07月11日 エル・パイス紙

まるでブランド物を身に纏ってもお洒落に着こなせない成り上がり者

EURO決勝の予想スタメン。両軍とも守備が安定しているだけに、1点勝負となるか。(C)Getty Images

 EURO2020の決勝は、イタリアとイングランドという伝統的な個性からの脱却を試みようとしている両国による対戦となった。

 イタリアは守備への過剰な意識を捨てたものの、戦士にも形容される強烈な競争心は健在だ。新たなスタイルを掲げ、フットボールの内容も魅力的になった。

 しかも、そのレールから外されても、持ち前の粘り腰を見せる。スペイン戦でもその強みを発揮し、試合を支配されながらも、防戦一方に回ることはなかった。

 対してイングランドはタレント軍団だ。しかしロングボールを放り込む攻撃に終始し、ブットボールを効率化することに慣れきってしまっていたため、豊富な戦力を持て余している。

 まるでブランド物を身に纏ってもお洒落に着こなせない成り上がり者のように、小刻みにパスを交換しようとしても、時にボールがスムーズに回らずにショートを起こしてしまう。

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 フットボールをする喜びよりも義務感が先に来てしまう選手たちの気質、ありったけの情熱で声援を送りハイテンポな試合展開を後押しするファンの存在、コンビネーションプレーへの戦術的な理解の不足といったファクターが "近代化"への道を塞いでいる。

 ともあれ、両国とも「負けないフットボール」から「勝ちに行くフットボール」へと舵を切ったことは間違いない。新たなフットボールへようこそ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
 
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