「なんだこれは…」衝撃大敗の“青森山田戦”が転機に。複数Jクラブも注目の米子北ボランチが描く成長曲線

2021年07月03日 松尾祐希

同じボランチで、3つ上の兄はJ2町田でプレー

Jクラブも注目する米子北MFの佐野。攻守両面で成長を見せている。写真:松尾祐希

 柔らかなボールタッチに創造性に富んだパス。米子北の攻撃を牽引する司令塔・佐野航大(3年)が右肩上がりで成長を続けている。

 1年次から10番を背負う佐野は今春からボランチでプレー。同校のOBでFC町田ゼルビアに所属する3つ上の兄・佐野海舟と同じポジションで、自分の良さを存分に発揮している。

 6月26日に行なわれたU-18高円宮杯プリンスリーグ8節の立正大淞南戦でも、抜群の攻撃センスでチャンスに絡んだ。序盤は相手の勢いに押されて20分と22分に連続失点を喫するが、以降は緩急を付けたパスや視野の広さを生かした展開力で攻撃を牽引。前半の終盤には右足のアウトサイドで回転を掛け、味方のスピードを生かす絶妙なボールを出すなど随所にセンスを感じさせるパスを供給した。

 相手の足が止まった後半は3列目から攻撃に加わり、よりゴールに近い場所で決定的なパスを何本も通していく。0-2で迎えた66分には自らのパスを起点に右サイドを崩し、FW福田秀人(2年)がヘディングでゴールを奪う。2分後にも佐野が同点ゴールを演出。ペナルティエリアの外からミドルシュートを放ち、このこぼれ球を左SB海老沼慶士(3年)が押し込んだ。
 
 2-2で試合を終えたが、立正大淞南戦で佐野が示した存在感は抜群。自身もゴールに絡み、ボランチでのプレーに手応えを得た。

 守備力と身体の強さが特徴だった兄とは異なり、自身は攻撃センスで勝負するタイプ。しかし、以前は当たり負けする場面が多く、技術力を発揮できない試合が多かった。1年時からトップ下や1.5列目でプレーした一方で、10番を託された冬の高校サッカー選手権は課題を露呈。後半途中から出場した1回戦の青森山田戦は0-6で完敗し、自身もPKを献上するなど散々の出来で終わってしまった。

「青森山田の中盤は武田英寿(浦和)、古宿理久(横浜FC)が最上級生でいて、1年生の松木玖生もスタメンで出場していた。彼らとマッチアップしましたが、『なんだこれは……』って思わされたのは今でも覚えています。自分はフィジカルも技術も全部負けていた。技術は頑張れば通用すると思っていたのに、全然ダメでしたから。試合中は余裕もなかったし、雰囲気に飲まれてしまった。あれだけの大舞台でプレーした経験がなかった中で、緊張はしなかったけど、試合の内容をあんまり覚えていない。あっという間に時間が過ぎて、気が付いたらPKを与えていた。試合後の夜にホテルでずっと試合の映像を見ていたけど、自分がどこにいるか分からなかったぐらいで……。PKを取られた以外何をしたかの印象がなく、何もできなかった。特に松木は同じ学年。絶対にやってやろうと思っていたのに……。相手はなんとも思っていないかもしれないけど、かなりの差を感じましたね」

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