香川真司の脳裏に甦る恩師との3シーズン。「優勝したことが思い出。それで世界を知ることができた」

2015年05月31日 サッカーダイジェスト編集部

「歓声が凄くて(監督の言葉は)聞き取れなかった」

ベルリンで行なわれたDFBカップ決勝。香川は立ち上がりからハイパフォーマンスを見せたものの、3シーズンぶりの優勝を掴みきれなかった。(C) Getty Images

 香川真司の脳裏に、様々な思い出が甦ってきた。7万5815人の超満員の観衆で、ぎっしり埋まったベルリンのオリンピアシュタディオン。その中央に、放心状態で立ち尽くした。すぐ傍では、優勝に沸くヴォルフスブルクの選手たちが、歓喜のダンスを踊っていた。

プレイバック 香川真司 IN ドルトムント2010-2012

ドルトムント 3-1 フライブルク|ドルトムント再デビューの一日
 
 ちょうど5年前――。21歳だった2010年7月に、香川はセレッソ大阪からドルトムントに移籍した。同年の南アフリカ・ワールドカップのメンバー入りを逃し、まだ欧州では無名の香川を中心選手として使ってくれたのが、紛れもないユルゲン・クロップ監督だった。今季限りで退任が決まっている〝恩人〟のラストマッチは、ヴォルフスブルクとのDFB(ドイツ連盟)カップ決勝だった。
 
 5分に香川のアシストからオーバメヤンのゴールで先制。ドルトムントは絶好のスタートを切りながら、その後すぐに前半だけで3失点。50分に、香川が伸ばした右足で当てたシュートは、わずかボール1個分だけ、ゴール右に逸れた。後半はヴォルフスブルクを押し込んだものの、再三のチャンスを活かせず、最終的には1-3の逆転負け。
 
 勇退するクロップ監督を勝利で送り出すことはできなかった。香川の胸中は、悔しさで溢れていたに違いない。
 
 試合終了後すぐ、香川はゆっくりと歩み寄ってきたクロップ監督と抱き合う。それだけで感極まり、涙が溢れ出そうになった。どんな言葉をかけられたかも、覚えていない。
 
「歓声が凄くて(監督の言葉は)聞き取れなかったです。これで最後になってしまうのでね。みんな、勝たせてあげたかったと思います」

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