レジェンドのS・ラモスを実質クビにしたペレス会長に称賛の声が多い理由

2021年06月30日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

クラブを超える選手はいない――

マドリーからの退団が決まったS・ラモス。(C)Getty Images

 レアル・マドリーのセルヒオ・ラモスの退団が決定した。レジェンド選手の引き際の対応に慎重になるのは洋の東西を問わないが、今回は意外なほどマドリー、もっと言えばフロレンティーノ・ペレス会長の決断を称賛する声が少なくない。

 S・ラモスが記者会見で、「オファーを取り下げられた」と明かしたように、今回の場合は実質クビと表現しても差し支えない。マドリーのレジェンドの退団と言えば、最近ではクリスチアーノ・ロナウドが記憶に新しいが、S・ラモスはスペイン人であり、10代で加入して以来、一筋で活躍してきた選手。2015-2016シーズンからはキャプテンも務め、ラウール・ゴンサレスやイケル・カシージャスら生え抜きの星とも堂々と肩を並べる存在だ。
 
 指摘されるのは、一連の交渉におけるS・ラモスの強硬な姿勢だ。クラブはコロナ禍で大幅な減収に見舞われるなか、全選手に対して10パーセントの給与カットを求めている。おまけにマドリーには、「30代以上の選手には単年契約のオファーしか提示しない」という不文律がある。かつてペペ(現FCポルト)も、それが原因で退団を余儀なくされた。

 しかし、S・ラモスはこれまでの実績を盾に、あくまで現状維持の複数年契約を主張。翻意した時には、すでにオファーはなかった。

 ペレス会長はビジネスライクに徹したと言えるが、そこで比較対象になるのが宿敵のバルセロナだ。このカタルーニャの名門は現在、高給取りのベテランを数多く抱え、それがクラブの経営を逼迫させている。黄金時代を築いた面々を年俸、契約期間のいずれにおいても厚遇で引き止めた結果が、現在の惨状を招いている。

 S・ラモスの退団は、今後クラブ内外に有形無形の影響を与えるだろう。しかしマドリーは、そのリスクを天秤にかけたうえで確固とした判断に基づき、レジェンドを切ったのだ。

 クラブを超える選手はいない――。スペインなどヨーロッパではしばしば使われるフレーズだが、S・ラモスはいま、それを身に沁みて感じていることだろう。

構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部
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