【FC東京】武藤がマインツに完全移籍。眠れない日もあったが、悩んだ末についに決断

2015年05月31日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

マインツの監督自ら欲しいと言ってくれた。

柏戦の68分にPKで決勝弾を叩き込む。そのゴールには特別な想いがあった。写真:姉崎愛子

 5月30日、FC東京が柏を2-1で下した試合後、味の素スタジアムの電光掲示板で武藤のマインツへの完全移籍が発表された。J1の第1ステージが終盤を迎えたタイミングでの発表は、当人が希望したものだった。
 
「(第1ステージが)終わってから発表すると、スタジアムに観に来てくださる方々を驚かせてしまう可能性があるので、このタイミングにさせていただきました」
 
 クラブの関係者によれば、仮に柏戦で敗れていれば発表は控えたという。だから、武藤は自らの決勝弾で勝てて「ホッとしています。チームの勝利に貢献できたことがなにより嬉しかったです」。
 
 実は1-1で迎えた65分過ぎに武藤がPKを獲得すると、少し経ってから地震があった。武藤がPKを蹴るまでに微妙な間ができたわけだが、そうしたプレッシャーに屈することなく冷静に決めた。
 
「ああいう間があって緊張感は増しましたが、外すわけにはいかなかった。こういう発表が控えているのを知っていたので、自分のゴールで勝利に導きたかった」
 
 良い形でマインツへの移籍を発表した武藤は、欧州挑戦への決断の理由について次のように述べている。
 
「マインツは前線から守備をして、ハードワークを求めるチーム。監督自身が自分を必要としてくださっていたので、移籍を決断しました。(マインツに所属する)岡崎選手にもメールなどで相談したりしました」
 
「代表活動を通してヨーロッパでプレーしている選手たちと一緒にやって挑戦したいと思いましたし、これからもっと世界に名の知れた選手になりたい。ここまで自分を成長させてくれたFC東京の関係者、ファン・サポーターの皆さんに、もうひとつ上のレベルで結果を出す姿を見せたいです」
 
 ただ、その決断に至るまでには苦悩もあった。チェルシーからの誘いに心が揺れた時期はあったという。
 
「やっぱり世界のビッグクラブですし、どこもオファーがないうちから声をかけてくれましたから。まあ、本当に悩みました。まったく寝られない日、サッカーに集中できない時期もありましたから」

「いきなり高すぎるレベルに行くと、慣れるまで時間がかかってしまう。だから、着実にステップアップできる、コツコツとやっていけるチームを選ぶことは心掛けました」
 
 悩んで、悩んだ末に「マインツ」という結論を出した武藤は、もはやチェルシーへの未練はないという。
 
「まったくないです。とにかく、マインツで結果を残すことだけを考える。そこでゴールをたくさん奪えれば、また良いお話をもらえるので。まずは自分を必要としてくれたチームに貢献したいです」
 

次ページ「引退する時は絶対にFC東京で。この気持ちはずっと持ち続ける」。

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