東京五輪“1年延期”に泣いた者・笑った者――非情な現実は偶然のドラマ

2021年06月23日 浅田真樹

1年延期が影響したのは24歳以下の選手だけに限らず

当初の予定通りに五輪が開催されていたら……森保監督は「今とは違ったメンバーになっていたと思う」と語る(写真は左上が三笘、同下が旗手。右上が杉岡、同中が柴崎、同下が酒井)。(C)SOCCER DIGEST

 東京オリンピックに臨む、男子サッカーの登録メンバーが発表された。

「メンバー選考は難しい作業だった」

 そう話す森保一監督にとっては、「できることなら、(今までに呼んだ)すべての選手をメンバーに選び、オリンピックに参加させてあげたい」というのが、偽らざる本音だろう。指揮官がメンバー発表の席上で口にした言葉のなかで、とりわけ印象的だったのは「去年、本来の日程で行なわれている東京オリンピックであれば、今とは違ったメンバーになっていたと思う」ということだ。

 非情な現実ではあるが、選ばれる側の選手のなかには、東京オリンピック開催の1年延期に泣いた者もいれば、笑った者もいる。それは、紛れもない事実である。

 1年延期を誰よりも味方につけたのは、三笘薫と旗手怜央の川崎コンビだろう。ふたりはこのチームの立ち上げ当初から常連ではあったが、チーム内の序列において決して上位に来る存在ではなかった。

 ところが、昨季大学からそろって川崎入りするや、瞬く間に急成長を遂げ、三笘に至ってはルーキーながらベスト11に選出されるまでになった。昨季の活躍が、今回のメンバー入りを大きく後押ししたことは疑いようがない。
 
 旗手に関しても、昨季の川崎での活躍はもちろんだが、今季に入り、左サイドバックで出色のパフォーマンスを発揮したことが大きかった。森保監督も「複数のポジションをこなせる」ことを選手選考のポイントに挙げていたが、このコンバートが旗手の強力なアピールポイントになったことは確かだ。

 また、開催の1年延期が選考に影響したのは、24歳以下の選手だけとは限らない。

 当初、このチームのオーバーエイジ(OA)候補として盛んに名前が挙がっていたのは、柴崎岳だったが、昨季ブンデスリーガで遠藤航が急成長。柴崎を押しのけるようにA代表でダブルボランチの軸になると、その序列がそのまま持ち込まれる形で、遠藤がOAとしてこのチームに加わることになった。1年前であれば、おそらく今回のリストに遠藤の名前はなかったはずだ。
 

次ページただただ運と言うしかないのだろう

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