【ACLプレビュー|名古屋】状態は上向き。正しく力を発揮できれば“らしい”試合展開を望めるはず

2021年06月21日 今井雄一朗

国際経験の“ベテラン”たちがキーマンに

名古屋の予想フォーメーション

「勝ちに行くんだという雰囲気はチームの中にあり、みんな気合いが入っています」

 そう言うマッシモ・フィッカデンティ監督こそが、一番気合いも入っていたように見えた。クラブとしては2012年以来9年ぶり、4度目のアジア挑戦を前に、名古屋グランパスはでき得る限りのポジティブな要素を揃えてタイに乗り込んだ。

 いまだ復帰できていない金崎夢生、そして守備だけでなくチームの大黒柱である丸山祐市を負傷で欠く布陣は、とりわけ未知数な部分の多いACLの戦いにおいては大きな痛手ではある。だが、日本代表に継続して選出されて良い経験を積んでいる中谷進之介、前半戦でその価値を大きく上げたランゲラックと稲垣祥、そしてその献身性において名古屋の"顔"となりつつある柿谷曜一朗らセンターラインの充実が、中2日での6連戦という過酷日程を前にした頼みの綱となる。

 今回はU-18の選手2名(豊田晃大、吉田温紀)を加えた26人の帯同メンバーで挑むことになるが、戦力の底上げ、起用法においては指揮官の手腕も強く問われることにはなるだろう。

 キーマンは"ベテラン"たちだ。年齢的な意味ではなく、国際経験がその拠り所になる。Jリーグとは比較にならないフィジカルコンタクトや未知のチームスタイルに対して、序盤3試合はとにかくその場の対応が勝敗を分けるポイントになる。

 それはACLや日本代表での経験がものを言う部分でもあり、ランゲラックや柿谷、齋藤学といったA代表経験者に加え、今季加入で17年、19年のACLファイナリストである長澤和輝の経験値は、チームにおけるアドバンテージとして大いに頼りにしたいところ。

 Jリーグ20試合で14回の無失点試合、無失点時間の最長記録更新も成し遂げた堅守のスタイルには絶対の自信がある一方で、5月は黒星が先行するなど不安定な戦いも露呈した。しかし20試合目の浦和戦、そして格下相手ではあるが三菱自動車水島FCとの天皇杯2回戦では攻守の噛み合うところも見られ、状態としては上向きとも言える。

 正しく力を発揮できればグループステージの対戦においても、名古屋らしい試合展開は望めるはずで、懸案である得点力の部分でエースのマテウス、柿谷、前田直輝らがリズムを掴めば、落ち着いた試合展開と守備で体力的なマネジメントも自ずとなされることだろう。
 
 フィッカデンティ監督は「この日程では結果以外に狙って持ち帰れるものはない」と言い、過密さとバブルによる隔離生活の中では、内容より結果の度合いも高まると明言している。そもそもが「すべての戦い、すべての試合において勝ち以外を受け入れてはいけないんだという感覚でゲームに入ること」を求める監督だけに、このシビアな戦いの中ではむしろ"名古屋らしさ"は発揮されやすくもあるかもしれない。

 まずは勝利を、勝利からすべてを逆算した戦いを、というチームスタイルは、クラブにとって久々のアジアの舞台に大きな優位性をもたらす期待も抱きやすいところがある。リーグ戦で川崎にやや水をあけられていることもあり、ACLへの比重が高まる可能性は大。名古屋のモチベーションはこちらの想像以上に強いと見てもよさそうだ。

▼グループステージ日程(開催地:タイ)
日付/対戦相手(国名)/試合時間(日本時間)
06.22 vs.ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)23:00
06.25 vs.浦項スティーラーズ(韓国)19:00
06.28 vs.ラチャブリFC(タイ)19:00
07.01 vs.ラチャブリFC(タイ)23:00
07.04 vs.ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)23:00
07.07 vs.浦項スティーラーズ(韓国)19:00

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)

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