【なでしこジャパン】“鮫島外し”に見た高倉イズム。指揮官が最後の最後まで貫いたスタンス

2021年06月19日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

ギリギリまで選手の見極めはやめない

なでしこジャパンを率いる高倉監督。最後の最後まで多くの選手を見極め続けた。(C)JFA

 なでしこジャパンこと日本女子代表は6月18日、東京五輪に臨むメンバー18名とバックアップメンバー4名を発表した。

 熊谷紗希、岩渕真奈、中島依美らこれまで軸を担ってきた選手たちが順当に選出されるなか、選考外となったのが、左SBの鮫島彩だった。

 2008年からフル代表で活躍し続け、国際Aマッチの出場は歴代9位タイの114試合。長らく代表の左サイドを支えてきた百戦錬磨だ。高倉体制では、熊谷不在の時にはCBも務めるなど信頼は厚く、今年4月の活動まではコンスタントに呼ばれていた。

 ところが、それほどの選手を指揮官は本大会メンバーから外した。

 その理由のひとつは、新戦力の台頭にあるだろう。例えば、北村菜々美だ。セレッソ大阪堺レディースで頭角を現わし、今季移籍した日テレ・東京ヴェルディにベレーザで調子を上げていたこの23歳は、今年3月下旬のトレーニングキャンプでフル代表に初招集。そして4月8日のパラグアイ戦でスタメンデビューを飾って存在感を示すと、そのまま東京五輪本大会のメンバーに滑り込んだ。なでしこジャパンでのキャップ数はわずか3試合。まさに大逆転である。

 もちろん指揮官にとって簡単な決断でなかった。「日々彼女の100㌫の努力をしてきたと思う。私自身も最後までなかなかご飯がのどに通らない姿や、ひとりで怪我の治療をしてきたサメの後ろ姿も見てきたので、そういったなかで、大きな舞台にチャレンジするなかでのこの決断は簡単ではなかった」と苦悩を明かしている。

 しかし、実績に捉われず、今調子の良い選手を選ぶその姿勢こそ、高倉イズムなのである。
 
 ワールドカップでも五輪でも、メンバー発表のギリギリまで選手の見極めはやめない――。それが就任当初からの高倉監督の一貫したスタンスだった。

 U-16からU-19まで各年代の代表を指導したのちに16年3月にA代表の監督に就任してからというもの、指揮官は様々な選手を招集してきた。長谷川唯、杉田妃和といった育成年代に指導した教え子の多くを引き上げた一方、時にはベテランの川澄奈穂美を呼び戻したり、時にはなでしこリーグ2部からまったく無名の選手を抜擢したりもした。

 高倉監督は、18年11月のインタビューでこんなことを言っていた。

「何か光るものがあれば、カテゴリーを問わず引き上げたい。選手自身は自分の可能性に気づいていない場合が多いので、大きく伸びるきっかけを与えてあげたいんです」
 

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