連載|熊崎敬【蹴球日本を考える】激闘の最前線でプレッシャーを引き受ける柏・レアンドロの重要性

2015年05月27日 熊崎敬

背後からの圧力をしっかり受け止め、あるいは巧みに外して――。

クリスティアーノとの巧みな連係から、決定的なゴールをお膳立てしたレアンドロ。アジア戦線での柏の躍進は、この男の存在を抜きには語れない。 (C) SOCCER DIGEST

 2試合合計4-4に終わった柏と水原のACLラウンド16は、アウェーゴール3-2で前者がベスト8に名乗りを挙げた。
 
【ACLラウンド16 PHOTOハイライト】柏×水原三星

 敵地での第1戦に3-2と快勝し、優位に立った柏だが、第2戦では序盤から水原に攻め立てられ、一時は3-4と逆転された。そんな劣勢の柏にとって起死回生となったのが、65分に生まれた小林のゴールである。このゴールはクリスティアーノとレアンドロの、左サイドでの巧みな連携から生まれた。
 
 スローインを受けたクリスが浮き球をダイレクトで後方のレアンドロに当て、これを胸で受けたレアンドロが身体を捻りながら右足ヒールで左サイドを駆け上がるクリスにつなぐ。
 
 左サイド深くに入り込んだクリスは、敵の隙間に顔を出したレアンドロにパスを通し、水原の3人を一気に置き去りにする。エリア内でフリーになったレアンドロは、ゴールへと突き進む。この時点でゴールはほぼ詰み。彼のシュートは果敢に身を投げ出した敵に阻まれたが、そのこぼれ球を小林が落ち着いて突き刺した。
 
 それはブラジル人独特の感性とテクニックが生み出したゴールだった。第1戦でもレアンドロは、2ゴール・1アシストと決定的な働きを見せている。
 
 一発で試合の流れを変えられるレアンドロとクリスの存在は、ACLの身を削るような戦いを勝ち上がる上で欠かせないものとなっている。
 
 試合後、クリスは「韓国人の当たりはとても激しい。ガツガツ来るから大変だ」と話していた。
 日韓対決にはJリーグとは異質の激しさがあるが、工藤を含めた柏の3トップは、プレッシャーがもっとも厳しい最前線で懸命に持ち堪えている。とくにセンターを託されたレアンドロの働きは称賛に値する。
 
 背後からの圧力をあるときはしっかりと受け止めて味方につなぎ、またあるときは巧みに外して敵陣に潜り込む。簡単にボールを失った場面はほとんどない。この試合で水原は守備陣のふたりが警告を受けたが、それはどちらもレアンドロへのファウルだった。
 
 サッカーは戦いであり、韓国勢、中国勢と対決するACLでは、その文脈が色濃くなる。一発の当たりは激しさを増してくる。
 
 そんな戦いの最前線で、敵のプレッシャーを引き受けているのがレアンドロだ。アジア戦線での柏の躍進は、この男の存在を抜きに語ることはできない。
 
取材・文:熊崎敬
 
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